人種差別を扱った絵本

「じゆうをめざして」

じゆうをめざして

じゆうをめざして

シェーン・W. エヴァンズ/作 さくまゆみこ/訳
(ほるぷ出版)2012年5月発行.28×22㎝.1600円

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くらいよる。

わたしたちは にげだす。

はしって、はって、つかれきって

いきついた さきに、

ひかりが みえる…。

アメリカ黒人奴隷の命がけの逃亡を描いた絵本です。

彼らは、人間として当たり前の生活をする自由を手に入れるために、南部から北部への逃亡を試みます。

簡潔で緊張感漂う言葉は、まるで一遍の詩を読んでいるようです。

つかまればおしまいと、命がけで逃げ出す。

かくまってくれる人や、助けてくれるひともいる。助ける人も命がけ…。

ラストの輝く光が、自由を手にした喜びと希望を表しています。

迫力のある力強い絵が印象に残りました。

いきなり読むとわかりづらいかもしれません。

奴隷制度や逃げるのを手助けした「地下鉄道」と呼ばれた人たちのことなど、巻末の作者後書きを先に読んで、歴史的背景について簡単に理解してから読むといいかもしれません。

高学年くらいから。

 ※“地下鉄道”をテーマにした「秘密の道をぬけて」「クロティの秘密の日記」の感想は、こちらから

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「つぼつくりのデイヴ」

つぼつくりのデイヴ

つぼつくりのデイヴ

レイバン・キャリック・ヒル/文 ブライアン・コリアー/絵
さくまゆみこ/訳(光村教育図書)
2012年1月発行.42p.23×29㎝.1600円

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今から200年ほど前のアメリカ・サウス・キャロライナ州で、奴隷の身分で壺を作っていたデイヴ―実在した人物を描いた絵本です。

奴隷だったデイヴは、粘土で壺を作って暮らしていた。

そして、自分の作った壺に、短い詩を書き残していた…。

文中に、彼がどんな人物だったのかという説明は一切ありません。

粘土を練り、ろくろを回して形を作り、釉薬をかける。さらに、自分が生きていた証として、壺に短い詩を刻んでいる…という壺作りの過程を、丁寧に描いた絵本です。

奴隷が創作に携わることや文字を勉強することは、その時代、許されなかったはず。

奴隷の身分だったデイヴが、なぜ陶芸の技術を学ぶことになったのか?

どこで文字を覚えたのか?

細かいことは、絵本の中には何も描かれていません。

ただ、創作中の手や顔の表情の絵から、彼の気持ちが伝わってきます。

巻末に、デイヴの人生についての解説が載せられていますが、わかっていないことも多いようですね。

デイヴが作った壺は、今も残っていて(巻末に写真あり)、彼が持っていた高い技術は評価され、彼が残した言葉も、当時の奴隷の声として、貴重なものとなっているようです。

絵がすばらしいです!水彩とコラージュを使った絵は、「ローザ」(→感想)を描いたブライアン・コリアーです。

2011年のコールデコット賞オナー作品。

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「おじいちゃんの手」

おじいちゃんの手

 「おじいちゃんの手

 
 マーガレット・H. メイソン/文 フロイド・クーパー/絵
 もりうちすみこ/訳(光村教育図書)
 2011年7月発行.30p.29×23㎝.1400円


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アメリカの人種差別をテーマにした絵本です。

おじいちゃんが孫のジョーゼフに語りかけるという形で書かれています。

わしの手は、ピアノも弾けるし、手品もできる、野球も上手かった。

でも、わしが働いていた大きなパン工場では、わしのこの手でパン生地をこねることも、さわることも許されなかったんだ。

「おまえの黒い手がふれたパンなど、白人が食べるものか」。

そこでわしの手は仲間を集め、抗議をし、権利を勝ち取った。

「黒い手だ、白い手だと区別するのは、もうやめよう」と。

今じゃ、どんな色の手も、パン生地をこねていいんだ。

ジョーゼフ、おまえのその手がどんな仕事をしようと、もう文句を言われることはないんだ。

おまえのその手は、なんでもやれる。

やれるんだよ。

1950年代から1960年のはじめまで、アメリカの大手のパン工場では、アフリカ系アメリカ人に対する差別がありました。

彼らは、床の清掃や、トラックへの荷の積み下ろし、機械の修理などはできましたが、パン生地を扱うことは許されなかったといいます。

人種差別を扱った絵本は多々出ていますが、パンを扱うという身近な舞台と、語りかけるような文章で、子どもたちにもわかりやすものになっていると思います。

全編セピア色の絵は、油絵の具で描いた絵を練り消しゴムで消すという独特の方法で描かれているとか。




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「リンカーンとダグラス」

リンカーンとダグラス

 リンカーンとダグラス

 ニッキ・ジョヴァンニ/文 ブライアン・コリアー/絵
 さくまゆみこ/訳(光村教育図書)
 2009年5月発行.40p.29×23㎝.1700円


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「ローザ」を描いたコンビの絵本です。

1865年3月4日、再選を祝うパーティの席で、リンカーン大統領はフレデリック・ダグラスが到着するのを待っていた。

その当時、黒人のゲストをホワイトハウスに招くのは異例のことだった…。

奴隷として生まれたフレデリック・ダグラスは、逃亡に成功しアメリカに渡った後、奴隷解放運動に尽力した人物です。

ダグラスは、自分で読み書きを学び、のちのニューヨークで、「北極星」という新聞を発行して、奴隷制の廃止を訴えたと言います。

ダグラスは自分が奴隷だった時のつらい経験から、リンカーンはニューオリンズで奴隷のせり市を目撃したことから、奴隷制度廃止運動の中心人物として活動してきました。

二人が歩んできた道のりと、奴隷制度廃止運動のあらまし。

そして、白人と黒人という立場や人種の違いはあっても、同じ目標を持って培ってきた二人の友情が描かれます。

小学校高学年くらいから。



※関連図書
 ・「ヘンリー・ブラウンの誕生日」「秘密の道をぬけて」「クロティの秘密の日記」
   →感想はこちら
 ・「ジェミーと走る夏」「ローザ」「キング牧師の力づよいことば」→感想はこちら
 ・「あこがれの機関車」→感想はこちら
 ・「ぬすみ聞き」→感想はこちら




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「ぬすみ聞き」

ぬすみ聞き—運命に耳をすまして

ぬすみ聞き—運命に耳をすまして

 グロリア・ウィーラン/文 マイク・ベニー/絵
 もりうちすみこ/訳(光村教育図書)
 2010年6月発行.40p.29×24㎝.1600円


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綿花摘みの仕事で、一日くたくたに疲れていても、わたしたち小さい子三人には、大切な仕事が残っている。

それは、ぬすみ聞き。

お屋敷に住むだんなさまも奥様も、肝心なことは、何ひとつ奴隷には教えてくれない。

だから、私たち子どもが、こっそり話を聞きとって、大人たちに伝えるのだ。窓の下にうずくまって、ひっそりと身を隠し、耳をすます。

奴隷の監督が代わること、父さんが売られずにすんだこと。

そして、奴隷制に反対するリンカーンが大統領に選ばれたというニュース…。

奴隷は、いつ、どこに売られ、家族と引き離されるのか、知ることもできません。

主人の屋敷の窓の下で、子どもたちにぬすみ聞きをさせたのは、人としての自由も権利も与えられなかった人たちが、残酷な運命に立ち向かうための精一杯の方法だった…と書かれています。

虐げられた過酷な暮らし。そんな中で、語り手の女の子エラ・メイは、同じ年頃の主人の娘が弾くピアノの音色に心を揺さぶられ、彼女が暗誦する詩を自分のものにする。時には、屋敷で開かれているパーティから、もれ聞こえるバイオリンに合わせて踊ったり…と、子どもなりにたくましく生きる一面も見せています。

つらさ、不安、喜び…黒人たちの表情から、彼らの感情が伝わってくるようです。

自由への光が、少し見えてきたところで、お話は終わっています。その後、奴隷制度は、どのような歴史をたどったかは、巻末に年表付きの解説が載せてあります。

高学年くらいから、大人まで。



※関連図書
 ・「あこがれの機関車」→感想はこちら
 ・「ジェミーと走る夏」「ローザ」「キング牧師の力づよいことば」→感想はこちら 
 ・「ヘンリー・ブラウンの誕生日」「秘密の道をぬけて」「クロティの秘密の日記」
   →感想はこちら
 ・「リンカーンとダグラス」→感想はこちら



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「席を立たなかったクローデット」

席を立たなかったクローデット—15歳、人種差別と戦って

 「席を立たなかったクローデット

 フィリップ・フース/作 渋谷弘子/訳
 (汐文社)2009年12月発行.182p.1400円


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アラバマ州モントゴメリ市。人種差別が特に激しかったこの町で、公民権運動に火をつけた人物として有名なローザ・パークスの9カ月前に、バスでの慣習に抗議し、勇敢な行動に出た15歳の少女がいた…。

ローザ・パークスより前に、同じように白人に席を譲らなかった少女がいたという情報を得た著者が、それがクローデット・コルヴィンであることを突き止め、彼女が公民権運動のパイオニアとして重要な役割を果たしたにもかかわらず、いわれのないバッシングを受け、忘れられかけているという記事を見つけます。

長い時間を経てやっと取材に応じてくれたというクローデット・コルヴィンを訪ね、何度も話を聞いて、彼女の半生をまとめたノンフィクションです。

クローデットは、自分を含め黒人がいたるところで受けている不公平な差別に怒りを持ち、不当な扱いを受けていると文句は言っても行動しない大人にもうんざりしていた。

1955年3月2日、クローデットは、白人に席をゆずれと運転手に怒鳴られても絶対に席を立たなかった。「これは憲法で保証された権利なんです」と、泣き叫びながら。結果、彼女は警官にバスから引きずり降ろされ逮捕されてしまう。

その後、彼女は釈放されるが、あの子が逮捕された子だと注目の的になり、指をさされ、あざ笑われることも多かったという。彼女はジム・クロウ法に違反したとして、保護観察の有罪となる。

しかし、その頃、高まっていたバスボイコットの“顔”にするには、クローデットは若すぎた。彼女が、貧しく危険なキングヒルの地域の住人だったことも理由のひとつだという。

その後、全米黒人地位向上協会モントゴメリ支部の書記だったローザ・パークスが、1955年12月1日、バスで白人に席を譲らなかったために、逮捕された。そして、モントゴメリの町全体を巻き込んで行動を起こすバスボイコットが始まった。

クローデットは、人種によってバスの座席を分けている法律は憲法に違反していると主張した「ブラウダー対ゲイル裁判」の原告の一人として裁判で証言した。黒人差別をなくために二度にわたって戦ったのである。この裁判で勝利し、バスでの人種差別はなくなった…。

人種差別の根拠になっていたジム・クロウ法を廃止させるのに貢献した一人の女性。これまで知られてこなかった事実が描かれます。

その当時の気持ちを率直に語っています。彼女が受けた屈辱的な思いや深く傷ついた心を思うとたまりません。1958年に仕事を見つけるためニューヨークに出てから40年以上離れた故郷モントゴメリに帰り、追い出された母校に迎えられ、今でも自分のしたことに誇りを持っていると話す彼女にぐっときました。

当時のモントゴメリでは屈強な男たちをバスの運転手として雇い、警察と同じ権限を持たせ、黒人たちにジム・クロウ法を守らせていたとは衝撃的でした。バスの前の方の座席に白人が1人で2人分の席を占領し悠々と座っている一方で、後部座席にはぎっちりと黒人たちが詰め込まれている、当時のアラバマ州の写真を見て、唖然としました。

中学生くらいから大人まで。2009年全米図書賞−児童書部門受賞作品です。



※関連絵本
 ・「ローザ」(光村教育図書)→感想はこちら



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「あこがれの機関車」

あこがれの機関車 (わくわく世界の絵本)

 あこがれの機関車

 アンジェラ・ジョンソン/作 ロレン・ロング/絵
 本間浩輔 ・本間真由美/共訳
 (小峰書店)2008年9月発行.
 32p.25×29㎝.1500円


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乗りものの絵本かなと思って手にとりましが、ちょっと違いました。

20世紀初頭、ミシシッピの綿花畑のそばを飛ぶように走っていく蒸気機関車キャノンボール。

綿花畑で長時間つらい労働をしている黒人たちにとって、それはあこがれの機関車で、機関士ケーシー・ジョーンズは、彼らのヒーローだった。

アイスランド人のケーシー・ジョーンズは、黒人のシム・ウェッブを助手にして、疾走していく。ケーシーの鳴らす長い汽笛は、彼らに夢と希望をもたらしていた。

綿花畑で働く“ぼく”は、仕事帰り線路づたいに歩きながら、機関車が旅する大きくて広い世界に思いをはせる。

しかし、1900年4月30日、嵐の夜に起きた衝突事故で、ケーシーは悲劇的な死を遂げる。

「これでなにもかも終わりなの?」と問うぼくに、「これからだって必ず現れる」と父さんは話してくれた。父さんがぼくの手を握ってくれた時、ぼくはケーシーのほかにもヒーローがいることに気づいた…。

実在した機関士−殉職したジョン・ルーサー・ケーシー・ジョーンスのことは、歌にもなっていて、アメリカでは有名なんだそうです。衝突を避けられないと悟ったケーシーは、助手のシム・ウェッブに飛び降りろと命じ、彼の命を助けたということです。

ケーシーの機関車に夢と希望を託した黒人たちの物語。

詩的な文章。力強い絵。

歴史的な背景までを理解して読むには、中学生以上から。大人の絵本と言えるでしょう。



※関連図書
 ・「ヘンリー・ブラウンの誕生日」「秘密の道をぬけて」「クロティの秘密の日記」
   →感想はこちら
 ・「ジェミーと走る夏」「ローザ」「キング牧師の力づよいことば」→感想はこちら
 ・「ぬすみ聞き」→感想はこちら
 ・「リンカーンとダグラス」→感想はこちら



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「ジェミーと走る夏」

ジェミーと走る夏 (ポプラ・ウイング・ブックス)

 「ジェミーと走る夏

 エイドリアン・フォゲリン/作 千葉茂樹/訳
 (ポプラ社)2009年7月発行.295p.1400円


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父さんは、となりの家に黒人の家族が引っ越してくると聞いたとたん、高いフェンスを建てた。

フェンスの節穴から隣をのぞいていたキャスは、引っ越してきた黒人の少女ジェミーと言葉を交わし、お互い走ることが好きなことを知る。

同い年の二人は、自分たちのことを“チョコレート・ミルク”と名づけ、お互いの家族には内緒で、毎朝一緒に走ったり、一冊の本を読みあったりと、仲良くなっていく。

けれどもそれが、黒人嫌いのキャスのお父さんと、フェンスを作ったことに反感を持つジェミーのお母さんに見つかってしまい、会うことを禁止されてしまう…。

物語は、12歳の白人の少女キャスの視点から語られます。

キャスとジェミーは、大好きな走ることを通して、お互いを認め合い友情を育んでいきます。その二人の友情に引っ張られるように、両親−大人たちの偏見が少しずつ打ち砕かれていきます。

人種差別を扱った作品ですが、二人の少女の友情を軸に爽やかな作品に仕上がっています。

黒人問題とともに、教育を受け生活水準も高い黒人家族と、貧しく生活が苦しい白人家族という図式も描かれます。

差別は今なお根強く残っているんだなと感じる一方で、抵抗なく近づく次世代の姿に未来への希望を持たせるものとなっています。

なんと言ってもジェミーの祖母・グレースおばあちゃんが魅力的。これまで様々な不公平を目にし乗り越えてきたグレースおばあちゃんは、少女二人の理解者として、どっしりと構え見守ってくれます。

中高生くらいから読めるかな。




「ジェミーと走る夏」の中で、グレースばあちゃんが語っているローザ・バークス事件は、絵本にもなっています。

ローザ

 「ローザ

 ニッキ・ジョヴァンニ/文 ブライアン・コリアー/絵
 さくまゆみこ/訳(光村教育図書)
 2007年5月発行.33p.29×23㎝.1700円


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1955年アメリカ南部のアラバマ州モンゴメリー。一人の黒人女性の静かな決断が、アメリカの歴史を変えるのです…。

ローザ・パークスは、仕事が終わり家に帰るために市バスに乗りました。その頃のバスは、前に白人、後ろに黒人が座ることになっていました。そして、中間にある席にはどちらが座ってもいいはずでした。

黒人の席は満席でした。でも中間の部分にはまだ空いてる席があって、ローザはそこに座りました。その時、「席を白人にゆずりなさい」と怒鳴るバスの運転手の声が聞こえてきました。

黒人ということで不平等な扱いをされることにうんざりしていたローザは、なにかあった時には受けて立つ覚悟ができていました。「ノー」と言って、そこに座り続けたローザは、警察に逮捕されてしまいます。

ローザの行為をきっかけとして、黒人たちは平等の権利を得るために、闘う決意を固めます。不正を正すみんなの声の代表者として、キング牧師が選ばれました。

キング牧師は言いました。「バスには乗らないことにしましょう。当然のことが水のように流れ出し、正義が大きな川となるまで、私たちは歩くことにしましょう」。

それから一年、人々は歩き続けます。モンゴメリーの市民たちが歩き続けられるように、国中から靴やコートやお金が送られてきたそうです。

やがて、最高裁判所はバスの席を人種によって分けることは違法だという判決を下します。ローザがノーと言ったことが、周りの人々に勇気を与え団結する力となったのです。

コラージュを用いたノンフィクション絵本。中学生くらいから大人まで。



キング牧師の力づよいことば—マーティン・ルーサー・キングの生涯

キング牧師の力づよいことば

 ドリーン・ラパポート/文 ブライアン・コリアー/
 もりうちすみこ/訳(国土社)
 2002年11月発行.1500円

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暴力に暴力でこたえてはいけない…。平和的な方法で黒人の人権と自由を訴え続けたキング牧師。

1964年ノーベル平和賞を受賞後、銃弾に散ったキング牧師の生涯と、彼の言葉を描いたものです。こちらもコラージュ絵本になっています。中学生くらいから大人まで。




※関連絵本
 ・「ヘンリー・ブラウンの誕生日」「秘密の道をぬけて」「クロティの秘密の日記」
   →感想はこちら
 ・「あこがれの機関車」→感想はこちら
 ・「ぬすみ聞き」→感想はこちら
 ・「リンカーンとダグラス」→感想はこちら

 

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「ヘンリー・ブラウンの誕生日」

ヘンリー・ブラウンの誕生日

 「ヘンリー・ブラウンの誕生日

 エレン・レヴァイン/作 カディール・ネルソン/絵
 千葉茂樹/訳(鈴木出版) 2008年12月発行.
 39p.29×24㎝.1900円


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奴隷として生まれたヘンリー・ブラウン。人としてではなく物として扱われていた彼らは、本人の意思など関係なく、売り買いの対象とされ、家族は引き離される。好きな人ができて結婚しても、妻と子どもたちを勝手に売られてしまう。

二度と家族に会えないという大きな悲しみの中、自由になりたいと願った彼が考えついたこととは…。

箱の中に身をひそめ自らを小包として、バージニア州リッチモンドからフィラデルフィアまで、27時間かけて送り届け、自由を獲得したヘンリー・ブラウンの伝記絵本です。彼のことは、アメリカやヨーロッパの新聞で大きく取り上げられ、“ヘンリー・ボックス・ブラウン”と呼ばれるようになったと言います。

誕生日を持たない奴隷だったヘンリー・ブラウンは、フィラデルフィアに到着し自由を勝ち得た1849年3月30日が、彼の誕生日となったのです。

淡々とした語り口と、意思が感じられる迫力ある絵からは、強く伝わってくるものがあります。高学年くらいから。

2008年コルデコット賞オナー賞受賞作品です。

ヘンリーブラウンの逃亡を助けたのが、“地下鉄道”と呼ばれた秘密組織。奴隷制を認める南部から、認めない北部へと逃げる奴隷を手助けする組織だったそうです。




この“地下鉄道”を扱った児童文学が、こちら。

秘密の道をぬけて

 「秘密の道をぬけて

 ロニー・ショッター/作 千葉茂樹/訳
 (あすなろ書房)2004年11月発行.159p.1300円


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南北戦争が始まる11年前−1850年のアメリカを舞台にした物語。

ある夜、物音で目覚めたアマンダは、両親が逃亡奴隷を逃がす手助けをしていたことを知る。アマンダの父親は、逃亡奴隷を逃がすための秘密組織“地下鉄道”の“駅長”をしていたのだ。(“駅長”は逃亡中の奴隷をかくまい休む場所を提供。次の“駅”まで送り届ける役割は、“車掌”と呼ばれていた)。

奴隷制は自分には関係ない、どこか遠くで起こっていることと感じていたアマンダだったが、逃亡中のアイザックさん一家の長女ハンナと仲良くなる。そして、追っ手が迫る中、自分も手伝うことを申し出る…。

150ページ余りの短い物語ですが、奴隷のハンナたちがこれまでどんな扱いをされてきたのか、助けているアマンダの両親はどんな危険な立場にいるのか、文字を獲得するということはどんなことを意味するのかが、きちんと伝わってきます。

歴史的な背景については、「おしまいに」と「訳者あとがき」に書かれているので、そちらを先に読んでから物語に入ってもいいでしょう。

見つかって捕まってしまうのではないか…という緊迫感の中で、温かくもてなすアマンダの両親と、アマンダとハンナが育む友情が、読み手をほっとさせます。

中村悦子さんの挿絵が、物語の雰囲気とマッチしていて、とてもいいです。




奴隷の女の子が文字を覚え、「地下鉄道の車掌」となっていく物語…。

クロティの秘密の日記 (くもんの海外児童文学)

 クロティの秘密の日記


 
 パトリシア・C. マキサック/作 宮木陽子/訳
 (くもん出版)2010年11月発行.288p.1500円


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舞台は、南北戦争がはじまる前、1859~60年のアメリカ南部ヴァージニア州。

奴隷の子として生まれ育った12歳の少女クロティが、主人公です。

(彼女は実在の人物ではなく、フィクションですが、史実をもとに当時の社会が描かれています)。

「奴隷は、読み書きを習ってはいけない。奴隷に、読み書きを教えてもいけない」。

そんな法律があった時代。

クロティは、ベルモント農場のお屋敷で、おぼっちゃまが勉強している間、うちわであおぐ仕事をするうちに、密かに文字を覚え、隠れて日記を綴っていた。

ある日、クロティは、おぼっちゃまの家庭教師としてやってきたハームズ先生が、奴隷廃止論者で、逃亡奴隷を助けるための「地下鉄道」の車掌だということを知る…。

クロティが1年間に渡って綴った日記…という形式で、物語は進んでいきます。

日記を書いていることが見つかったら、だんなさまにムチでぶたれ、南部の果てに売り飛ばされてしまう。そんな恐れを抱えながらも、クロティは文字を覚えていきます。

文字は、クロティにとって、世の中を知る魔法の言葉。クロティが読み書きできることに気づいたハームズ先生がこっそり渡してくれる新聞や本から社会を知っていきます。

そして、奴隷が置かれている現実への憤り…。日記を書くことを通して、クロティは自分の生きる道を考え、ずっと知らなかった“自由”を夢見て手に入れていきます。

同じ奴隷の中でも、密告があったり、気の休まらない生活の中、友情を育んだり、友だちの恋愛を応援したりと、少女らしい気持ちも綴られていきます。

奴隷は黒人だけ…と思っていたのですが、母親が奴隷なら子どもも奴隷という法律の元、見かけは白人でも母親が奴隷の身分だったら奴隷にされたという事実を、この物語の中で初めて知りました。

全ての奴隷が自由の身になったのが、南北戦争が終わった1865年。キング牧師の「公民運動」により、人種差別的な法律がなくなったのは、1964年までかかったそうです。




※関連図書

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