「甘粕正彦 乱心の曠野」佐野眞一
「甘粕正彦 乱心の曠野」佐野眞一(新潮社)2008年5月発行.475p.1900円
甘粕正彦の評伝。今年2009年、第31回講談社ノンフィクション賞受賞作品です。
陸軍士官学校に入学した甘粕は、落馬事故による怪我でエリートコースを外れ、憲兵になることを余儀なくされる。
甘粕憲兵大尉は、大正12年関東大震災の大混乱に乗じて、無政府主義者の大杉栄・伊藤野枝夫妻と7歳になる甥を虐殺した(大杉事件)首謀者として、軍法会議で実刑判決を受けた。
大杉事件で軍籍をはく奪された甘粕は、刑務所を出所後、フランスに渡り、その後、満州へ移住。
満州事変をはじめとする謀略工作に深く関わり、最後は満州映画協会(満映)の理事長として、青酸カリをあおって自決した。54年の生涯だった。
著者は、膨大な歴史資料にあたり、甘粕氏と接した人々を取材し、ゆかりの地を歩いて、彼の謎に満ちた生涯をたどっていきます。
私自身、甘粕像として思い浮かぶのは映画「ラストエンペラー」で演じた坂本龍一さんで、大杉事件についても教科書で習う程度しか知識がなく、知らないことばかりだったので、最後まで興味深く読めました。
特に、今はほぼ定説となっているそうですが、甘粕が大杉事件のエスケープゴートとして全責任を一人でかぶったという話は驚きました…。
映画「ラストエンペラー」の影響か、甘粕氏には潔癖で冷酷非情なイメージを持っていましたが、この本の中では、部下から慕われ、子どもにもなつかれると言っていた意外な甘粕像もあぶりだされます。
最後の職場となった満映に移ってからは、職員の待遇改善を進め、特に中国人スタッフには給与を倍以上に引き上げ、中国人を蔑視する言動を禁じたり、終戦後、満映社員ために脱出用の列車を確保し、退職金分の現金を用意したといいます。
全編を通して、自分自身よりも国家を優先し、敵役を一人で背負わされた男の孤独が伝わってきました。
読み応えありました。
| 甘粕正彦乱心の曠野 販売元:セブンアンドワイ セブンアンドワイで詳細を確認する |













![月刊 クーヨン 2008年 05月号 [雑誌] 月刊 クーヨン 2008年 05月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51djeC5H0uL._SL160_.jpg)




















