日本の昔話

絵本「かじかびょうぶ」

「かじかびょうぶ」川崎大治・文 太田大八・絵(童心社)2004年5月発行.32p.28×22㎝..1600円

伊豆に伝わる民話です。

昔々、古くから栄えた家の主の菊三郎は、なまけ者で、毎日遊んでいるうちに、たくさんあった山も畑も売り尽くし、とうとうかじかざわの奥山を売らなければならなくなった。

そこで菊三郎がその奥山を見に出かけると、彼の前にかじかのとうりょうが現れて、「このかじかざわだけは売らないで下さい」と懇願された。

必死にお願いされた菊三郎は、なんとかしてかじかざわを売らずにすませようと、家財道具をかき集めて売り払った。残ったのは何の値打ちもない古ぼけたまくらびょうぶだけ。

その晩、菊三郎は、何百という楽しそうなかじかの鳴き声を聞いたような気がした。そして、目覚めると、まくらびょうぶに何百というかじかの絵が描かれていた。

そのかじかびょうぶは、評判になり、ゆずって欲しいという人もたくさん現れたが、菊三郎はどうしても手離す気にはなれなかった。

そうして、なまけ者だった菊三郎は、まるで人が変わったように働き者になり、昔のように豊かな家になった。人柄も昔とは違い、貧しい人や困っている人にも親切で、村中の人たちから慕われるようになった。

やがて、菊三郎は80歳を越えるじいさまになり、ねたきりの体になった。そんなある日、殿様の使いで大勢の家老がやってきて、天下に評判のかじかびょうぶを売れと、枕元にたくさんの千両箱を積み上げた。

菊三郎が、「大事な屏風なので、相手が殿様でも手放すことはできません」と断ると、家老は腹を立て、屏風を奪い取ろうとする。

すると、かじかびょうぶから、何百というかじかが這い出していって、ただの古い紙のびょうぶに変わってしまった。

「それでよいのじゃ。みんなかじかざわへ帰るがよい」と、菊三郎はにっこり笑って大往生をとげたという。

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「へっこきあねさ」荒井良二

「へっこきあねさ」長谷川摂子・文 荒井良二・絵(岩波書店)2004年9月発行.760円

長谷川摂子さんが文章を書いている、岩波“てのひらむかしばなし”シリーズの1冊。

ばあさと暮らしている大工のあんにゃのところに、隣村から、いいあねさが嫁にきた。

ある日、顔色があおーくなってきたあねさを心配したばあさが、事情を聞いてみると、「おら 実は へが出とうて、出とうて」と言う。遠慮してもじもじするあねさに、ばあさは「かまわん かまわん、こけこけ」と言うので、あねさは着物のすそをまくり、どっばーん、だっばーんと、でっかいへをこいた。

ばあさは、あねさのへの風に吹っ飛ばされて、天井に頭をぶつけた。仕事から帰ってきたあんにゃは、大事なかかさまをけがさせる嫁は、うちにはおかれねえと、あねさは里に帰されることに。

里まで送っていく途中、あねさのこくでっかいへに何度も助けられ、喜んだあんにゃは、里へ帰すのはもったいないと、あねさを家に戻すことにした…。

このお話は、「へっこきあねさがよめにきて」「へっこきよめさん」など、いろんなタイトルで絵本になっていますが、こんなに笑えたっけ!?と思ったのは、これが初めて。それは、荒井良二さんの絵の力に負うところが大きいかもしれません。そして、手書きで書かれた、“どっばーん!だっばーん、でっぼーん!”という、あねさの豪快なオナラの音も可笑しい。

特に、“ぼっがーん すーっ でぼんーん すーっ”と、へをこき、へをすいこんでを繰り返し、畑から大根をすべて収穫してしまう場面は、大爆笑。何がなんだかわからないまま吹っ飛ばされ、オロオロしている旅の尼さんの顔もたまりません…。

お父さんの迫力ある声でどっばーん!だっばーん、でっぼーん!ぼっがーんと、読んでもらっても楽しいかも!?

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絵本「つつじのむすめ」

つつじのむすめ つつじのむすめ

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「つつじのむすめ」松谷みよ子・文 丸木俊・画(あかね書房)1974年11月発行.32p.28㎝.980円

山を五つ越した先の祭りに招かれた娘は、その村の若者と恋に落ちた。娘は、若者に会いたくて会いたくて、毎晩五つの山を越えて、彼のもとにやってくる。

しかし、若者は嵐の夜にもやってきた女が、魔性のものではないかと疑うようになる。おそろしさが厭わしさに変わり、若者は娘がやってくる険しい崖の上で待ち伏せをし、彼女を谷に突き落とした。

やがて、そのあたりには、あわれな娘の血がしたたったのか、真っ赤なつつじの花が咲き乱れるようになったという…。

掌に米を握りしめて山を走り続け、若者のもとに着いた時には、それがつきたてのもちになっている。そのもちを二人で食べながら、幸せな時間を過ごしていた。けれども、若者が娘を魔性のものと思ってからは、そのおもちを食べなくなる…。

若者に会いたい一心で、山を越えてくる娘の一途で激しい恋心。それがだんだんおそろしくうとましく感じる若者…。娘の思いは報われず、愛した男性から殺されてしまうという“悲恋物語”。なんとも切ないお話です。大人向けですね。

妖艶で迫力のある丸木俊さんの画に圧倒されました。

以前、松谷みよ子さんの講演会の中で、この「つつじむすめ」のお話をされていて、丸木俊さんがある新聞に、“松谷さんも私も掌に餅を握りしめて走る女なのです”と書かれた文章をみて恐縮しましたと話されていました。

このことは、松谷さんの「民話の世界」(2005年発行.PHP研究所)の中にも書かれています。

民話の世界 Book 民話の世界

著者:松谷 みよ子
販売元:PHP研究所
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〔引用文〕

けれども走りつづけているうちに、はっと掌を開いてみたら餅になっていたという実感は、振返ってみればわかる気がする。結婚と同時に人形劇団を結成したこともあって、劇団のこと、家事のこと、書くこと、育児と、私は家の中でさえ走りつづけてきたような気がする。走らなければ何しろ間に合わなかった。そんなふうに夢中で走りつづけたことが、掌の餅になって私には何かを与えられたという気がする。それは、いま振返って思うことなのだけれども。

なお、この話は、長野県上田市の太郎山に伝わる民話「つつじの乙女」を下敷きにして書かれた絵本です。「松谷みよ子の本 9」(1995年講談社発行.700ページ以上の厚い本です)の中に、「つつじの乙女」が掲載されています。

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「やまんばのにしき」

やまんばのにしき (むかしむかし絵本 2) Book やまんばのにしき (むかしむかし絵本 2)

著者:松谷 みよ子
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「やまんばのにしき」松谷みよ子・文 瀬川康男(ポプラ社)1967年5月発行.40p.27㎝.1000円

むかしむかし、あるところに、やまんばが住むちょうふくやまという高い山があった。

ある年の秋、風がごうっと吹いたかと思うと、屋根をどろどろと踏み鳴らして、叫ぶ声がした。「ちょうふくやまのやまんばが、子ども産んだで。もちついてこう。ついてこねば、人も馬もみな食い殺すどお」。

村の人たちは、食い殺されてはたまらないと、もちをつき、ふだんいばってばかりのねぎそべとだだはちの若者二人と、先導役として自ら名乗り出た七十過ぎのあかざばんばが、やまんばのところに持っていくことになった。

途中若者二人は逃げ帰ったが、あかざばんばは、村のためにと一人で山のてっぺんまで持っていった。

やまんばは、「ようきたようきた。」とあかざばんばを迎え入れ、もちの入ったくまのすまし汁をごちそうしてくれた。

今日食われるか、明日食われるかと思いながら、あかざばんばが、やまんばの手伝いをして21日が過ぎた。

やまんばは、うちに帰りたいというあかざばんばに、土産としてにしきを持たせてくれた。そして、「村のひとたちにはなんにもねえども、だれも風邪ひとつひかねえように、まめで暮らすように、おらのほうで気をつけるで」と言った。やまんばがくれたにしきは、いくら使っても次の日にはまた元通りになっているという不思議なものだった…。

こわい話かなと思いきや、やまんばが登場すると、なんともいい話に。あとがきによると秋田の民話なんだそうです。

やまんばというと、人を食うという怖いイメージがありますが、この「やまんばのにしき」のやまんばは、なんとも慈悲深い母親のようなんです。あかざばんばの勇気とやまんばのやさしさが心に残ります。

産後、母乳が良く出るようにおもちを食べるといいよと言って(本当かどうかはさだかではありません…)持ってきてくれた親戚がいたことを思い出しました。

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絵本「黄金りゅうと天女」

黄金りゅうと天女 黄金りゅうと天女
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本の中に書かれてはいないのですが、沖縄に伝わる民話なのではないでしょうか。

むかしむかし、那覇のまちに、夫婦になりたいと願う若い男女がいた。けれども男はさむらいで、女は百姓の生まれだったから、身分違いの夫婦はならぬと言われ思案にくれていた。

ある晩、枕もとに天女があらわれ、「泊のはまから舟にのり、慶良間にわたって暮らすがよい」という不思議な夢を二人そろってみた。

その言葉にそって慶留間島に渡った二人は結婚し、女の子を授かった。この子は、島のみんなから可愛(かなー)とよばれ、かわいがられた。

七つの誕生日を迎える朝、可愛は「わたしは天にいかねばなりませぬ」と言い残し、慶留間のてんぺんのオタキ山に向かった。そこで、大きく手招きすると、阿嘉島のオフタキ山のあかりから黄金色の竜がやってきて、可愛を背中に乗せると消えていってしまった。

それから何年かが過ぎ、大和のかいぞくせんが阿嘉島と慶留間島に上陸し、食べ物や財産を奪い、娘や子どもをさらいはじめた。すると、突然オフタキ山から黄金竜が竜巻を起こしながらあらわれ、かいぞくせんとかいぞくどもをこっぱみじんにした。この時、島の人たちは竜の背中に座る美しい天女を見たという。「きっと可愛だ」「可愛がわしらをすくってくれたのじゃ」と人々は両手を合わせいつまでもおがんでいたという。

黄金竜が去る前に、奥武島のてっぺんにつきさした青竹は、大百合の林となって今でもこの島に残っているそうです。

「黄金(こがね)りゅうと天女」代田昇・文 赤羽末吉・絵(銀河社)1974年9月発行.32p.30㎝×21㎝.1240円

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絵本「かえるをのんだととさん」

かえるをのんだととさん―日本の昔話 (こどものとも絵本) Book かえるをのんだととさん―日本の昔話 (こどものとも絵本)

著者:日野 十成
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「かえるをのんだととさん(こどものとも傑作集)」日野十成・再話 斎藤隆夫・絵(福音館書店)2008年1月発行.32p.20×27㎝.800円

腹が痛くなったととさん(旦那さん)は、かかさん(奥さん)からお寺のおしょうさまにきいてみなさるといいと言われ、相談に行きます。

おしょうさまから「そりゃなあ、はらのなかにむしがおるせいじゃ、かえるをのむといいぞ」と言われて、かえるをのみこんだととさん。はらはなおったが、はらの中をかえるがぺたらぱたらと歩く。それでまた、おしょうさまのところにいくと、今度はへびをのむといいぞと言われます。その後も、きじに、漁師に…と、ととさまは、言われるがままにいろんなものをのみこみむことになります…。

昔話なので、ありえないことなんですけど、すごくおもしろい!とぼけた感じの絵も、いい味だしてます。

文章もテンポよく、「かかさんやぁ」と呼ぶと、なにも聞かずに「おしょうさんにききなされ」というかかさんとのやりとりも楽しいです。

ラスト、おにをのみこんだととさんの口にまめを投げ入れて、おにを退治する場面が出てくるので、節分に読む絵本としても使えます。

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