酒井駒子さんの新作絵本。 切なくやさしい物語です。
くまは、なかよしのことりが死んで、とても悲しんでいました。自分で小さな箱を作り花びらを敷き詰めて、ことりをそっと箱の中に入れました。そして、どこへいくにも、その箱を持っていきました。森のどうぶつたちはだれもが、「ことりはもうかえってこないんだ。つらいだろうけど、わすれなくっちゃ。」と言います。誰ともその悲しみを分かち合えないくまは、家に鍵をかけて閉じこもってしまいました。
それから幾日かたったある日。くまはとてもいいお天気なことに気がついて、しばらくぶりに外に出ます。そして、やまねこに出会いました。くまが持っていた箱を見たやまねこは、「きみはこのことりとほんとうに仲がよかったんだね。ことりが死んでずいぶんさびしい思いをしてるんだろうね」といいます。
やまねこは、自分の箱からバイオリンを取り出して、きみとことりのためにと一曲演奏してくれました。くまは、やまねこが奏でる音楽を聞きながら、ことりと過ごした日々を思い出します。“自分はずっとことりと友だちなんだと”納得できたくまは、いつも一緒にひなたぼっこをした場所に埋めてあげることにしました。
そしてくまは、やまねこが持っている古いタンバリンをみて、やまねこにもずっといっしょだった友だちがいたんだと思うのです…。
大切な人との別れは、だれの身にも訪れます。くまは悲しみは消えることはないけれど、大切な人との思い出が自分の中にたくさん残っていること、同じ思いを抱えている人がいるんだということに気がつくのです。
ことりとの楽しい思い出を思い出していくと、モノクロの絵の中にピンクが色づいていきます。同じモノクロで描かれていても、やまねこと出会った後のくまの絵には、光が感じられような気がしました。
やまねこのバイオリンを聞いているくま…の場面が好きです。音楽がもたらす力を再認識しました。そして、やまねこがもっているタンバリンには、くまとことりと同じような物語があるんだろうなぁと思わせてくれます。
「くまとやまねこ」湯本香樹実・文 酒井駒子・絵(河出書房新社)2008年4月発行.1300円