児童文学

「ふたごの兄弟の物語」トンケ・ドラフト

「ふたごの兄弟の物語(上)」トンケ・ドラフト・作 西村由美・訳(岩波少年文庫)2008年12月発行.326p.720円

「ふたごの兄弟の物語(下)」トンケ・ドラフト・作 西村由美・訳(岩波少年文庫)2008年12月発行.330p.720円

「王への手紙」がおもしろかった、トンケ・ドラフトのデビュー作。1961年に発表されたもの。読んでいてどこか懐かしい感じがしますが、ちっとも古びていません。

バビナ国の美しい首都バイヌーに住むふたごの兄弟ラウレンゾーとジャコモは、外見はそっくりだけど、性格は正反対。

腕のいい貴金属細工師として名をなしていく兄のラウレンゾーと、自分に向いている仕事がわからず、あちこち旅に出るジャコモ。

二人は一緒に、あるいは一人で旅に出かけ、たくさんの冒険を体験することになります。その中では、牢屋に入れられたり、難破事故で流れ着いた見知らぬ国の王になったり、裁判にかけられたりと、さまざまなことに巻き込まれていきます。

二人はとても仲良しで、どんな時でも助け合い、時にはそっくりなのを利用して騙したりしながら、危機を乗り越えます。やがて青年になった二人は愛する奥さんを見つけ、最後の最後にはジャコモも自分に向く職業を見つけます…。

一話完結型。ハラハラドキドキさせながらも、二人が知恵を出し合い、機転を利かせて問題を解決し、すべてめでたしめでたしで終わるので、爽快感があり読んでいて気持ちがいい。おもしろかった!おすすめです。

ちなみに著者のトンケさんは、12歳から15歳までをインドネシアの日本軍収容所で過ごしたと言います。収容所時代に作ったお話の一つからバビナ国が生まれ、それがこの物語の舞台に発展したそうです。

 ふたごの兄弟の物語 上 ふたごの兄弟の物語 上
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 ふたごの兄弟の物語 下 ふたごの兄弟の物語 下
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「縞模様のパジャマの少年」ジョン・ボイン

「縞模様のパジャマの少年」ジョン・ボイン作 千葉茂樹・訳(岩波書店)2008年9月発行.234p.1800円

物語は、軍人の息子-9歳のブルーノの視点から語られます。

1942年、ブルーノは父親の“重要な”仕事のために、家族全員でベルリンから遠い場所に引っ越すことになった。

新しい家の周りには一軒も家がなく、遊ぶ友だちもいない。気味の悪い場所と感じたブルーノは、ベルリンに帰りたいと父親に訴えるが、聞き入れてもらえない。

ブルーノの部屋の窓からは、巨大な金網のフェンスや、からまりあう有刺鉄線、そして遠くに見える無数の小屋には、縞模様のパジャマに縞模様の布の帽子と、みんな同じ格好をしている何千人という人々が見えた。

暇をもてあまし、一人で外へ探検に出かけたブルーノは、絶対に近づいてはいけないと言われていた巨大なフェンス沿いを歩いているうちに、フェンスの向こう側にいる縞模様のパジャマをきた少年と出会う。同じ年の同じ日に生まれたその少年シュムエルとブルーノは、誰にも言わない秘密の友だちになる。

それからブルーノは、フェンス沿いに長い距離を歩いて、シュムエルに会いに行くようになった…。

フェンスの向こう側にどうしてたくさんの人がいるのか?父親がどんな仕事をしているのか?読者には少しずつ事情が見えてきますが、ブルーノは何も知らないという設定です。

息子の出世と仕事を嘆き怒って家を出て行ったお祖母さん、メイドのマリア、給仕係のパベル、父親の目を盗んで兵士と仲良くなる姉…。みんな何かを知っていたけれど、幼いブルーノには言葉を濁して何も言わない。なんの情報も入らない上、そんなとんでもないことをしているとは、子どもには想像さえもできない。

シュムエルからフェンスのそちら側の話を少しずつ聞いていくことになりますが、ブルーノは最後まで本当のところは何にも理解していなかったのではないかと思わせます。状況ばかりか、友だちだというシュムエルの気持ちさえも。

だから、シュムエルに対しても無邪気に無意識に傷つける言葉も発してしまう。私にはその無邪気さが無性にこわかったですね…。

ラスト近く、もしかしてこんなことになるのでは…と予測したことがまさにその通りに…。衝撃的な結末です。収容所で行っていた大虐殺では、まったく個人の“顔”など見ていなかったという証を感じさせました。

話の中に引き寄せられるようにして、最後まで一気読み。夏休みにぜひ一読を。

今年(2009年)第55回青少年読書感想文全国コンクール高等学校の部の課題図書。

また、来月8月には、『ブラス!』を撮ったマーク・ハーマン監督によって、この本を原作とした映画が公開になります。映画の公式サイトは、こちらです。

縞模様のパジャマの少年 縞模様のパジャマの少年

著者:ジョン ボイン
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「たまごを持つように」まはら三桃

「たまごを持つように」まはら三桃(講談社)2009年3月発行.252p.1400円

たまごを持つように たまごを持つように

著者:まはら 三桃
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中学の弓道部を舞台にした、爽やかな青春小説。

まはら三桃さんの作品の中では、一番万人向けかと…。

不器用だが、あきらめずコツコツと努力する早弥。最初から秀でた才能を見せたが、長いスランプに陥った実良。日本人の母と黒人の父を持つ運動神経抜群の春。

個人競技だが、一人きりではない。団体戦では、同じ気持ちで的に向かう。

弓道にかけた2年半。全国大会を目指す三人の成長物語。

なじみのなかった弓道の世界。

弓は、“握卵”と言って、たまごを持つようにやわらかく握らなければならないという。物語の語り手となる早弥は、その感覚を忘れないようにと、左手にいつもうずらのたまごを持ち歩きます。

心のあり方が大きく影響するという競技の奥深さに、おもしろさを感じました。

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「ベルおばさんが消えた朝」ルース・ホワイト

「ベルおばさんが消えた朝」ルース・ホワイト作 光野多恵子・訳(徳間書店)2009年3月発行.272p.1500円

地味な装丁で、今どきの小・中学生には手にとりづらいのではないかと思うのですが、中身はおもしろかった。読み応えあり。

1950年代、アメリカ・バージニア州の山間にある小さな町。

12歳の女の子・ジプシーのうちの隣にあるおじいちゃんの家に、同じ年のいとこ・ウッドローが引き取られてきた。

ウッドローのお母さんで、ジプシーの母親の妹にあたるベルおばさんが、ある朝突然、姿を消したのだ…。

お話が上手で、みんなを惹きつける魅力を持つウッドローと、美少女で、何不自由なく暮らしているように見えるジプシー。

しかし、二人は、胸のうちに大きな悲しみを抱えていた。母親が失踪したウッドロー。そして、ジプシーは、実父の死にまつわる大きな傷を抱えていた。

二人はすぐに仲良くなり、誰にも言えなかった胸のうちを打ち明け、助け合い、ぶつかりあいもしながらも、失った親のことを受け入れるようになるまでを描いていきます。

物語は、ジプシーの視点で語られ、彼女とウッドローの気持ちに丁寧に寄り添いながらストーリーは進んでいきます。

やがて、ジプシーは、二人が生まれてくる前から続く家族の物語を知ることになります。

ウッドローもジプシーも親から愛されてきた時間を持っています。それなのにどうして自分の前からいなくなってしまったのか。

“苦しみが、愛よりも大きかっただけ”…。

それを受け入れ納得できた時に、人はまた一つ大きく成長していくのだと、この物語の中で、はっきり見せられた気がしました。

満月に夜に、ジプシー、ウッドロー、ベニーの3人で散歩する場面は、美しく、映像的にも強い印象を残しました。

1997年ニューベリー賞オナー受賞作品。

ベルおばさんが消えた朝 ベルおばさんが消えた朝

著者:ルース ホワイト
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「パリのおばあさんの物語」岸恵子・訳

「パリのおばあさんの物語」スージー・モルゲンステルヌ/著 セルジュ・ブロック/イラスト 岸恵子/訳(千倉書房)2008年10月発行.37p.1600円

びっくりするほど薄い本だったのですが、中身は深い…。

夫に先立たれ、息子は独立。ひっそりと独り暮らしをしているおばあさんの物語。

年齢とともに、思い通りにならず、できないことが増えてしまった体。それでも、老いと孤独を引き受けながら暮らしています。そして、読み進むうちに、おばあさんが言葉もわからないフランスに渡り、ナチスから逃げ、息をひそめて生きながらえてきたことも、明らかになっていきます…。

苦難を乗り越えてきた。家族との楽しい思い出もあった…。現在と過去を行ったり来たりしながら、いろんなことを受け入れて生きてきたおばあさんの人生が語られます…。静かだけど、光の感じられる物語になっています。

女優・岸恵子さんの初めて翻訳した絵本ということで、話題になっているようですね。絵本という形になっていますが、大人向けです。

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「リンゴの丘のベッツィー」

「リンゴの丘のベッツィー」ドロシー・キャンフィールド・フィッシャー作 多賀京子・訳 佐竹美保・絵(徳間書店)2008年11月発行.288p.1600円

表紙-佐竹美保さんの絵に魅かれて手に取った本。挿絵もいいですよ~。

9歳のベッツィーは、赤ちゃんの時に両親を亡くし、ハリエット大おばさんとフランシスおばさんから、大事に大事にされて育ちました。

ところが、ある日、大おばさんが病気になり、ベッツィーは親戚がいるバーモンド州のパットニー農場に行くことになりました…。

町から田舎へ引っ越し、過保護に育てられ、ひ弱だったベッツィーが、たくましくなっていく成長物語になっています。

大好きです!このお話。読んでる時、本当に幸せな気持ちでいっぱいになりました。

私は、いわゆるみなし子の女の子が、新しい環境で受け入れられ、彼女自身も周りのみんなを幸せにして、なくてはならない存在になっていくという物語が好きなんだと思いました。

アメリカでは1917年に出版されたものなんだそうです。

「赤毛のアン」「少女ポリアンナ」「秘密の花園」「ハイジ」などの少女小説が好きな人には、絶対おすすめ!

小学校4.5年生くらいから読めるかな。

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「ヒットラーのカナリヤ」

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「ヒットラーのカナリヤ」サンディー・トクスヴィグ作 小野原千鶴・訳(小峰書店)2008年8月発行.261p.1500円

著者の父親の体験をもとにしたフィクション。

1940年4月、デンマークにドイツが侵攻してきた日から、1943年9月、ユダヤ教の正月を祝うロシュハシャナの前夜から10日間の救出劇まで、3年半の物語が語られます。

語り手となるバムスの家族は、5人家族。ママは舞台女優。パパは画家。オーランド兄さんとマーシャ姉さん。一緒に暮すことになったパパの兄さん・ヨハンおじさん。

そして、それまで全く意識したことがなかったが、親友のアントンや、ママの専属スタイリストのトーマスなど、ぼくのまわりには、ユダヤ人の知り合いがたくさんいた。

占領された当初は、無視して相手にしないという姿勢を貫いたデンマーク人に対して、激しい迫害や生活の大きな変化などは感じられない。けれども、1942年秋以降、ドイツの情勢があやしくなり、事態は悪化。街中にも緊張が増していく。

ドイツ軍を刺激し、彼らを怒らせるようなことをせず、耐えて待っていれば状況は変わるという考えを持っていたパパ。レジスタンス運動に深く関わっていくオーランド。隠れてドイツ兵と付き合っているマーシャ。ドイツを支持するヨハンおじさん。

占領するドイツ軍に対する気持ちは、バラバラだったバムス一家だったが、やがて、自分たちもユダヤ人をナチスの手から守るため、なにかやらなければ…と一致団結。レジスタンス運動に加わることになる。

バムスの家族も、ユダヤ人を自宅や病院でかくまい、船でスウェーデンに送り出す計画を立て実行します…。

第二次世界大戦中のデンマークを舞台にしたものを読んだのは、初めて…ですね。一市民であるデンマーク人が結束し、命をかけて7220人ものデンマーク系ユダヤ人をスウェーデンに逃がしたという史実も、この本で初めて知りました。

13歳の男の子・バムスの緊張感と、自分も役に立ちたい、助けたいという必死さが、痛いほど伝ってきます。

ふわふわと浮世離れなイメージでいた女優のママが、見事な演技を見せて力を発揮、二度も危機を救います。それゆえに、彼女のその後が悲しい…。

だれがどっちの味方かを見極めるのが、難しい時代。著者が、本の中で二度も語っている、“すべてのドイツ軍が悪人で、すべてのデンマーク人が善人だったわけではない”という言葉は、あの時代を生き抜いてきた人々の実感だったのでしょう。

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「わすれんぼライリー、大統領になる!」

「わすれんぼライリー、大統領になる!」クラウディア・ミルズ・文 R.W.アリー・絵 三辺律子・訳(あすなろ書房)2008年12月発行.127p.1200円

主人公のライリーは、忘れ物ばかりしてる男の子。そんな調子だから、勉強も得意とは言えません。

でも、ライリーは音楽が大好きで、サックスにあこがれ、四年生になると受けられる器楽の特別授業に出たいと思っていました。

けれども、ライリーのうちには、毎月サックスの貸出料を払うお金がありません。あきらめられないライリーは、お金を貯める方法を考えますが…。

ライリーの頑張る力となったのが、ちょうどその頃、始まった伝記の授業。

一人一人調べてくる人物を指定され、最後にはその人物の格好をして、伝記パーティを開くことになるのですが、ライリーが割り当てられたのは、“テディ”の愛称で親しまれたセオドア・ルーズベルト大統領。ライリーは、彼のことを調べていくうちに、テディならどうするだろうと考えて行動するようになっていくのです…。

小学校中学年向きかなと思うのですが、おもしろく読みました。

クラスメートたちも、ガンジーやヘレンケラー、エリザベス一世など、それぞれ割り当てられた偉人たちのことを調べていくうちに、その人物を尊敬し、次第に彼らになりきっていく様子が、ほほえましいです。伝記(例えそれが学習漫画だとしても)を読んでみようとする子どもたちの興味の入口になりそうな本です。

調べる時には、参考資料は3冊は使うようにとか、調べたことが合っているか必ず二重にチェックすることが大切だとか、調べ学習の方法についても、さりげなく触れられています。

わすれんぼライリー、大統領になる! Book わすれんぼライリー、大統領になる!

著者:R.W. アリー,クラウディア ミルズ
販売元:あすなろ書房
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「氷石」久保田香里

氷石 (くもんの児童文学) Book 氷石 (くもんの児童文学)

著者:飯野 和好,久保田 香里
販売元:くもん出版
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「氷石」久保田香里・作 飯野和好・画(くもん出版)2008年1月発行.304p.1500円

天平九年(737年)夏、平城京。14歳の千広の母は、奈良の都で大流行している疫病(天然痘)で死に、父は遣唐使船で唐に渡ったまま帰ってこない。千広は、病よけの小石や木札を売りながら、一人きりで暮らしていた。千広に字を教えくれ、なにかと気にかけてくれた従兄の八尋も、疫病に倒れてしまった。

ある日、市でのいざこざに巻き込まれた千広は、施薬院で働く法師・伊真に助けられ、ケガを負った千広を献身的に世話をする安都の力もあり、元気を取り戻していく…。

唐から戻らない父親に対して、置いていかれたという恨みの気持ちを募らせていた千広。

しかし、施薬院での仕事を手伝い、父とよく行った代書屋の先生との出会いを通して、誰も頼らないと、頑なだった千広の心が、少しずつほぐれていきます。

唐の国で学問を学びたいと、進んで遣唐使船に乗った父。父にあこがれ、いつか父のように大学寮に通うのだと思っていた千広。唐に残り学問を続けている父親の気持ちが少しずつわかるようになり、父を誇りに思う気持ちが、またよみがえってきます。

そして、自分にもその血が流れ、もっと学びたい、学問をしたいという気持ちが沸き起こってくるのです。

宿奈との淡い恋も絡めながら、自分の進む道を見つけていく千広の姿を描いていきます。

おもしろかったです。おすすめ。

その後の彼らをまた読みたいです。ぜひ続編を!!

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「時をさまようタック」ナタリー・バビット

時をさまようタック (児童図書館・文学の部屋) Book 時をさまようタック (児童図書館・文学の部屋)

著者:小野 和子,Natalie Babbitt,ナタリー バビット
販売元:評論社
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「時をさまようタック」ナタリー・バビット 小野和子・訳(評論社)1989年12月発行.173p.1400円

不老不死の家族と、一人の少女の物語。どこか幻想的で、引き込まれるように読んでいきました。よかったです。

ある八月の初め。87年前、トゥリーギャップ村のはずれにある、フォスター家の森の泉を飲んでしまったタック一家は、十年ごとにその泉でおちあっていた。

その頃、フォスター家のひとり娘ウィニー10歳は、口うるさい祖母や母の下で、息がつまりそうになり、家出を考えていた。

彼らは、フォスター家の森の中で出会い、タック一家の秘密を知ってしまった少女ウィニーは、誘拐される。

そこへ、子どもの頃に聞いた年をとらない家族のことを二十年間探し続けている黄色い服の男が現れた。森の中で、彼らの話を盗み聞いた黄色い服の男は、ウィーニーの居所を明かすのと引き換えに、フォスター家の森を手に入れ、泉の水を商売にしようとする…。

泉の水を口にしたために、年老いることも、死ぬこともできなくなったタック一家の四人。年をとらない彼らには、いろんなうわさが広がり、ひと所にいることもできない。

周りでは、すべてのものが成長し、変化していく。けれども、自分たちだけは、成長も変化も止まってしまったタック一家。永遠に生き続けなければならない苦悩と残酷さが描かれていきます。それでもタック一家は、成長していくウィニーに出会ったことをとても喜びます。

心揺れながら彼らを受け止め、タック一家の人々を愛し、友人となったウィニー。ウィニーは、タック家の次男ジェシーに淡い恋心を抱きます。ジェシーは、ウィニーに17歳になった時に飲んで欲しいと、ビンに入った泉の水を手渡します。さて、ウィニーはどうするのでしょう…。

自分たちの存在を隠し続けているタック夫妻と、永久に続く時間を楽しもうよという姿勢のウィニー。何か世の役に立つことをすべきだと考え、生き続けることを意味のあるものにしようと思っている兄のジェシィ。彼らが今でもどこかをさまよっているような気がします。なんともいえない切なさが残りました。

この物語、映画にもなったようですね。

エバーラスティング 時をさまようタック DVD エバーラスティング 時をさまようタック

販売元:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
発売日:2005/12/21
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「天山の巫女ソニン (1)」菅野雪虫

天山の巫女ソニン 1 黄金の燕 Book 天山の巫女ソニン 1 金の燕

著者:菅野 雪虫
販売元:講談社
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「天山の巫女ソニン 1.黄金の燕」菅野雪虫(講談社)2006年6月発行.255p.1400円

生後間もなく巫女として見こまれ、天山に連れて行かれたソニン。しかし、12才の時に才能がないと言われ、下界に下ろされます。

里に帰ったソニンは、両親や姉に温かく受け入れられ、友だちもできますが、戻ったのもつかの間、沙維の国の末の王子・イウォルの待女として、お城に召されることに。そして、王宮内の陰謀に巻き込まれることになるのです…。

先が気になる、先を読ませる書きかたで、どんどんどんどん読まされて、気がついたら一気読み。おもしろかったです。

主人公のソニンは、先日読んだ「RDG」の泉水子とは、真逆のキャラクター。巫女としての力は足りなかったけれど、腐ることなく、明るく前向きな女の子。

天山という世俗から離れた狭い世界を出て、いろんな人に出会い、人間のいろんな感情に接することになるソニン。彼女は、天山で12年間授かった知識を、大切な人たちの役に立てようとします。ソニンとイウォル王子の今後の関係も楽しみ。

ボリュームはありますが、高学年くらいの女の子におすすめしたい。

作者の雪虫というペンネームは、子どもの頃好きだった雪虫(この虫が飛ぶようになると雪が降る日が近いといわれる)からとったそうです。講談社児童文学新人賞作品。

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「RDG」荻原規子

RDG レッドデータガール  はじめてのお使い (カドカワ銀のさじシリーズ) Book RDG レッドデータガール はじめてのお使い (カドカワ銀のさじシリーズ)

著者:荻原 規子
販売元:角川グループパブリッシング
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「RDG-レッドデータガール はじめてのお使い」荻原規子(角川書店)2008年7月発行.301p.1600円

荻原規子さんの新シリーズ。カドカワから新創刊されたファンタジーレーベル「銀のさじ」、期待の第一弾作品です。

主人公は、熊野の山奥にある玉倉神社で生まれ育った鈴原泉水子。中学三年生の泉水子は、内気でクラスの中で浮いた存在。ふつうの女の子になりたいのになれないと、思い悩んでいた。

そんな泉水子が、物心がついたころから伸ばしている髪を切った時から、彼女の周りでいろんなことが起きるようになる。

そして父親の友人の相楽雪政が、「おまえの一生は、泉水子につきそうためにある」と言って、突然、泉水子と同年の息子・深行を連れてくる…。

まずは第1巻目。泉水子がどんな系譜に生まれたのか?まだまだ全体像が見えないまま、話は次巻へと続きます。(次巻の舞台は東京へと変わっていくようです)。

自覚しなかった力を持つ泉水子が、これからどう変わっていくのか。そして、敵対関係の相楽親子が、泉水子の持つ大きな力に気が付き、お互いどう出てくるのか。

泉水子と深行、二人の成長物語になっていくのでしょう。いろんな意味で二人の行く末が気になります。

にこやかな人相とは別な顔を持っていると思わせる相楽雪政の曲者ぶりがたまりません…。

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「夢の彼方への旅」

夢の彼方への旅 Book 夢の彼方への旅

著者:エヴァ・イボットソン
販売元:偕成社
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「夢の彼方への旅」エヴァ・イボットソン著 三辺律子・訳(偕成社)2008年6月発行.382p.1600円

ロンドンの寄宿学校で暮らすマイアは、両親を列車事故で亡くし、アマゾンに住む遠い親戚のカーター家に引き取られることになった。マイアは家庭教師として雇われたミントン先生と一緒に、長い船旅の末、ゴムの栽培によって富を手にした入植者たちが暮らすマナウスにたどり着いた。

マイアは、カーター家には、同じ年頃の双子の女の子もいるということで楽しみにしていた。しかし、カーター家がマイアを引き取ったのは、マイアに遺されたお金が目当てだった…。

20世紀初頭のブラジルが舞台です。

カーター家の人々のキャラクターは、強烈!いじわるな双子に、ジャングルやインディオを嫌い、消毒薬と殺虫剤を離さないカーター夫人。義眼を収集してるカーター氏。

そこで暮らす人々との間に壁をつくり、全くとけこもうとしないカーター家とは対照的に、マイアは、周りの人々から愛され、カーター家の人々が嫌っているインディオたちと仲良くなり、彼女の世界はどんどん広がっていきます。

友だちのクロヴィスが劇団を追われ、亡くなった博物学者バーナード・タバナー氏の息子の行方を捜す二人組みが絡んでくるあたりから、ハラハラドキドキ物語は加速的におもしろくなります。

おすすめです。

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「漂泊の王の伝説」

漂泊の王の伝説 Book 漂泊の王の伝説

著者:ラウラ・ガジェゴ・ガルシア
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「漂泊の王の伝説」ラウラ・ガジェゴ・ガルシア 宮下直弘・訳(偕成社)2008年3月発行.315p.1500円

おもしろかった!

アラビアの砂漠を舞台に、6世紀に実在したと伝えられる漂泊の詩人・イムルーウルカイスをモデルにして創作した物語です。

キンダ王国の王子ワリードは、容姿端麗、才気あふれる若者だった。しかし、自らが優勝するつもりで開催したカスィーダ(長詩)のコンクールで、貧しい絨毯織りのハンマードに三度も敗れるという屈辱を味わった。嫉妬にかられたワリードは、ハンマードを王室の資料編纂係として拘束し、家族と切り離し、古文書の整理と“人類の歴史をすべて織りこんだ絨毯”を織れという難題を命じた。

絶望でうちひしがれたハンマードは、非凡な才能をそそぎこんだあげく、正気を失い、部屋に閉じこもり食事もとらず眠りもせず休みなく織りつづけた。彼は、不思議なおそろしい絨毯を織り上げた後、衰弱しぼろぼろになって亡くなった。

ひとりの男の人生をめちゃめちゃにしたという、罪の意識と後悔の念に苦しんだワリードは、政治をおろそかにし、王国をも滅亡へと導いた。自らも全てを失ったワリードは、漂泊のマリク(王)と名乗り、盗まれた絨毯を追って旅に出る…。

ワリードは、絨毯織りを優勝者に選んだ偉大な詩人アンナービガから、あなたの詩には“心がない”という欠点を指摘されていた。その時は意味がわからなかったワリードだったが、贖罪の旅の中で、盗賊や遊牧民、商人たち、愛する女性ザーラと出会って多くのことを見、さまざまな経験を積んだことにより、言葉が心から自然にわきでて来るようになる。

詩のコンク-ルで始まり、詩のコンクールで終わる構成。旅の途中ワリードと深く付き合った三人の男たち。ワリードの旅の手引きをしてくれた赤いターバンをまいた謎の男の正体。最後全てがひとつになって、気持ちよかったです。

キンダ王国はかつて存在し、その遺跡がアラビア半島中央部でみつかっているそうです。そのキンダ王国の最後の王、ホジュル王の息子イムルーウルカイスが、<詩の王子>とか<漂泊の王>と呼ばれ、著名な詩人だったようです。なお、この物語の絨毯織りのエピソードや盗まれた絨毯をさがして旅をする話は作者の創作です。

読み応えあり。おすすめの1冊です。

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「流れ行く者」上橋菜穂子

流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36) (偕成社ワンダーランド 36) Book 流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36) (偕成社ワンダーランド 36)

著者:上橋 菜穂子
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「流れ行く者」上橋菜穂子・作 二木真希子・絵(偕成社)2008年4月発行.276p.1500円

“守り人シリーズ”の番外編にあたる四編から成る中短編集。13歳のバルサと11歳のタンダ。二人の子ども時代の物語です。

なによりこのシリーズを再び読める喜び。バルサやタンダにまた出会えることの嬉しさよ。読み終わった後、シリーズ本編を最初から読み直したくなりました。

家族に囲まれ、里で暮らすタンダは、山にいるトロガイを慕い、バルサに会いに行く。流れ者のバルサが、田んぼの収穫や祭りを経験し、ダンダの祖父や母親からかわいがられ、里の暮らしに触れる、つかの間の安息の日々…。

その後、旅に出たバルサは、一転して厳しい世界に身を置きます。父を王に殺され、父の友人だったジグロと共に追っ手をのがれ、故国から逃げ出して七年。旅から旅へと、ひところに長く落ち着くことのできない暮らし。生きのびるため、武術の腕を磨く日々。そして、旅の中で、さまざまな現実を見ていきます…。

つらい旅の後、バルサの帰りを待ちわびているタンダのもとに帰るところで、物語は終わっています。バルサとタンダの絆は、ずっとつながってきたものなんですね。

強烈な印象を残したのは、バルサがはじめて命のやりとりをする場面。13歳の少女にはあまりにも過酷な現実。人の命を奪うことの重み…。壮絶です。バルサの悲鳴が辛く耳に残りました。

守り人シリーズは、やっぱり二木真希子さんの絵が一番しっくりきますね。おすすめです。

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「白いキリンを追って」

白いキリンを追って Book 白いキリンを追って

著者:ローレン・セントジョン
販売元:あすなろ書房
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「白いキリンを追って」ローレン・セントジョン著 さくまゆみこ訳(あすなろ書房)2007年12月発行.247p.1400円

イギリスに住む11歳の少女マーティーンは、火事で両親を亡くし、会ったこともない祖母の住む南アフリカ・ケープタウンのサウボナ鳥獣保護区で暮らすことになります。

「白いキリンに乗ることのできる子どもは、すべての動物に対して力を持つ」という伝説に登場する白いキリン。

先祖から伝わっている伝説によってマーティーンの運命は定められていたのだと明らかになった時、その白いキリンが密猟者に盗まれてしまいます…。

南アフリカを舞台にしたミステリ仕立ての冒険物語。これがシリーズの1冊目になるそうです。

母親はなぜ以前サウボナに住んでいたことをマーティーンにひと言も言わなかったのか?祖母はなぜマーティーンをサウボナ保護区の中に入ることを許さないのか?白いキリンを追いかける密猟者は誰なのか?グレースおばさんの予言、マーティーンが持つ特別な才能…と、謎は尽きず、ハラハラドキドキしながら読みました。

イギリスから南アフリカヘ。がらっと生活が変わり、学校にもなじめず孤独感が募るマーティーンが、伝説の中だけに生きていると思われていた白いキリンと心を通い合わせ、白いキリンの背中に乗って夜のサバンナを疾走する場面は圧巻です。

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「もりのゆうびんポスト」

もりのゆうびんポスト (そうえんしゃハッピィぶんこ 12) Book もりのゆうびんポスト (そうえんしゃハッピィぶんこ 12)

著者:原 京子
販売元:草炎社
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「もりのゆうびんポスト」原京子・作 高橋和枝・絵(そうえん社)2007年11月発行.70p.1100円

小学校1年生のまゆは、冬休み一人でおじいちゃんの家に泊まりに来ていました。おじいちゃんの家の近くの森に探検に行ったまゆは、そこで見つけたゆうびんポストに手紙を入れてみます。次の日、ポストのところに行ってみると、「まゆちゃんへ」と書かれた手紙が、「コンタくん」から届いていました…。

手紙をもらったことも出したこともなかったまゆは、うれしくて何度も何度も読み返し、コンタくんとの手紙交換が始まります。毎日ドキドキワクワクしながら、森のポストに通うまゆの姿がかわいらしい。おうちに帰ることになり、森のポストに手紙を出せなくなっちゃうと困っていたまゆに、とりさんが助け舟を出してくれるラストにもほっとします。

誰かから自分宛の手紙をもらうのって、うれしいものですよね。電話もいいけど、手紙ってなんども読めるからいい。そんなことを思い出させてくれます。

最後のページに、コンタくんに手紙を書くとお返事がもらえるという絵はがき付きです。

低学年くらいから読めるかな。おすすめです。

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「ネコのタクシー」

ネコのタクシー (福音館創作童話シリーズ) Book ネコのタクシー (福音館創作童話シリーズ)

著者:さとう あや,南部 和也
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「ネコのタクシー」南部和也・作 さとうあや・絵(福音館書店)2001年5月発行.88p.1200円

ネコのトムは、タクシー運転手のランスさんに拾われて、念願の飼い猫になりました。

ある日、トムは骨折をして働けなくなったランスさんのかわりに、ネコのタクシーを始めることにします。ランスさんのタクシーと同じ黒色で小さなネコ用のタクシーを作ってもらいました。でも人間は乗れません。ネコのタクシーのお客さんはもちろんネコ。お礼は1ポンド硬貨と決めました。ネコのタクシーにはエンジンがないので、自分の足で地面を蹴って進みます。

トムは自慢の足を使って、ケガをしたネコを動物病院へ運んだり、プレゼントのケーキを運んだり、銀行強盗の逮捕に貢献したりと、大活躍します…。

なんとも楽しい物語。絵本から読み物への橋渡しになるような本です。低学年くらいから。おすすめ。

この作品は、作者の初めての童話で、ドーバー海峡に面したイギリスの町を舞台としているそうです。ちなみに作者の南部和也さんは、東京で猫専用の「キャットホスピタル」を開業されているそうです。

ネコのタクシー アフリカへ行く (福音館創作童話シリーズ) Book ネコのタクシー アフリカへ行く (福音館創作童話シリーズ)

著者:さとう あや,南部 和也
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「ねこのタクシーアフリカへ行く」南部和也・作 さとうあや・絵(福音館書店)2004年5月発行.224p.1300円

ある日、トムの前に父親だと名乗るドクター・ジョンがあらわれます。ドクター・ジョンからアフリカのサルの王様の招待状を手渡されたトムは、ランスさんと一緒にアフリカのゴロンゴロン高原へと旅立つことになります。

トムの持ち物は、招待状と、トムのお父さんが持たせてくれた「すこしこまったときに読む手紙」「こまったときに読む手紙」「とてもこまったときに読む手紙」という三通の封筒だけ…。

トムとランスさんのアフリカへの旅は、ハラハラドキドキ。出会った動物たちに助けられながらも、ランスさんとはぐれてひとり残されたり、そのランスさんには思いがけない再会があったりと、波乱万丈の旅となります。

こちらは上記の「ネコのタクシー」に比べて、ずいぶん長い話になっていますので、中学年くらいから。愉快で楽しいこのシリーズ、おすすめです。

ネコのドクター小麦島の冒険 (福音館創作童話シリーズ) Book ネコのドクター小麦島の冒険 (福音館創作童話シリーズ)

著者:南部 和也,さとう あや
販売元:福音館書店
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「ネコのドクター小麦島の冒険」南部和也・作 さとうあや・絵(福音館書店)2008年4月発行.264p.1500円

トムの父親であるドクター・ジョンの若かりし頃のお話です…。

ネコのジョンは、人類学者のポート博士の家に住み、博士の助手をしていました。

ある日ジョンは、ポート博士を含め町の人たちが“ゆっくり症”にかかっていることに気がつきます。フラワー島でとれた小麦粉に原因があると考えたジョンは、科学アカデミーからの依頼を受けて、問題解決のためフラワー島へと乗り込みます・・・。

陽気で愉快な冒険物語。小麦粉が原因か…と思いきや、いつしかあやしいのは、フラワー島のキノコだった!?

ジョンは自慢の鼻でにおいを嗅ぎながら、謎を追っていきますが、なんと自らがゆっくり症にかかってしまう大ピンチに!それでも見事に謎を解き明かし、科学アカデミーから“ドクター”として認められるまでが描かれます。

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あさのあつこ「風の館の物語」

風の館の物語1 (文学の扉) Book 風の館の物語1 (文学の扉)

著者:あさの あつこ
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「風の館の物語 1」あさのあつこ作 百瀬ヨシユキ・絵(講談社)198p.1300円

風の館の物語(2) (講談社・文学の扉) Book 風の館の物語(2) (講談社・文学の扉)

著者:あさの あつこ
販売元:講談社
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「風の館の物語 2」あさのあつこ作 百瀬ヨシユキ・絵(講談社)

母が入院し、12歳の洵は、妹の沙菜とともに春になるまで遠く離れた大叔母の家で暮らすことになった。そこは「風の館」と呼ばれる古い屋敷。二人を含め、大叔母の孫にあたるナツなど7人が暮らす。

何かあったらすぐに知らせろよというナツの言葉と、着いたその日から起きる不思議な現象…。館の主である大叔母の琴音は、なかなか姿を見せない。

そしてある夜、三毛猫のポロに導かれるようにして母屋に足を踏み入れた洵は、そこで大叔母の息子で30年前に16歳で亡くなったという洵吾に出会う。

風が舞い風がささやく「風の館」では、こちらの世界とあちらの世界の二つが重なって存在しているという。そこを行き来できるのは、風と洵だけ。そして邪悪な何者かが風の館を呑み込もうとしていた…。

沙菜を守らなきゃという責任感を持ち、まっすぐで肝がすわった洵のキャラクターがいいですね。緊張感の中にも、妹の言動のかわいらしさや、あちらの世界でねこがお茶を入れようなゆかいさなどをちりばめ和ませてくれます。そのバランスがとてもいい。

挿絵を描いた百瀬ヨシユキさんは、スタジオジブリで仕事をされている方なんだそうですが、しっかりものの洵と人なっつこい沙菜は、「となりのトトロ」のさつきとメイに重なりました。

不穏な予感が風の館を覆うところで2巻目がおわっています。物語はまだ続きます。これからどう展開していくのか先が見えません。続きが楽しみです。高学年くらいから。

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「ベイカー少年探偵団」

消えた名探偵 (児童図書館・文学の部屋 ベイカー少年探偵団 1) Book 消えた名探偵 (児童図書館・文学の部屋 ベイカー少年探偵団 1)

著者:アンソニー・リード
販売元:評論社
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「消えた名探偵」(ベイカー少年探偵団)アンソニー・リード著 池央耿・訳(評論社)2007年12月発行.182p.800円

シャーロック・ホームズの「緋色の研究」「まがった男」「四人の署名」の中で、ウィキンズをリーダーとする浮浪児のグループが、ベイカー街遊撃隊(ベイカー・ストリート・イレギュラーズ)として登場します。

そのホームズの手助けをした浮浪児たちが、ベイカー少年探偵団と名を改めて、この物語の主役となってます。

コナン・ドイルの作品の中では、リーダーのウィキンズにしか名前がありませんでしたが、本作では、メンバー全員に名前がつけられ、ウィキンズを中心に大活躍し、自分たちの力で事件を解決していきます。

あとがきによると、この「ベイカー少年探偵団」のように、誰もが知っている古典の登場人物や時代設定を借りて後世の筆者が書いた作品を、“パスティシュ”と言うそうです。

ホームズだけではなく、ワトスン、レストレイド警部も登場するのも嬉しい。ヴィクトリア朝末期のロンドンの雰囲気も感じられます。

高学年くらいから読めるでしょう。6作出版の予定で、現在3巻目まで出ています。

こちらも、ウィギンズをリーダーとした少年たちが活躍する、シャーロック・ホームズ外伝です。

〈カラス同盟〉事件簿―シャーロック・ホームズ外伝 Book 〈カラス同盟〉事件簿―シャーロック・ホームズ外伝

著者:アレックス・シモンズ,ビル・マッケイ
販売元:あすなろ書房
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「カラス同盟事件簿」アレックス・シモンズ.ビル・マッケイ著 片岡しのぶ・訳 佐竹美保・画(あすなろ書房)2008年2月発行.215p.1300円

名探偵ホームズに協力して、暗黒街の情報集めをしていた“ベーカー街不正規隊”。そのリーダーだったウィギンズは、仲間のティムが殺され、子どもまで容赦なく殺す悪党の存在に怯えます。ウィギンズは、仲間から意気地なしの汚名を着せられ“ベーカー街不正規隊”も解散となってしまいます。

そんな折、ティムの弟ドゥーリーが、ホームズの鹿射ち帽を見つけたことから、新たな事件が浮上。ウィギンズは、新しい組織“カラス同盟”を結成し、事件を追うことになります…。

“カラス同盟”には、少女も参加。彼らは危険をおかしながら、シャーロック・ホームズを救い出し、ティム殺しの犯人をも捕まえたりと破竹の活躍をみせます。

1887年のヴィトリア女王即位五十周年祝典を狙う陰謀、ホームズの失踪など、舞台設定は上記の「ベイカー少年探偵団」ととてもよく似ています。どちらが好きか、読み比べてみるのも楽しいかもしれません。(私自身は、こちらの「カラス同盟事件簿」の方が読み応えがありました).

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「ヒトラーのはじめたゲーム」

ヒトラーのはじめたゲーム Book ヒトラーのはじめたゲーム

著者:アンドレア・ウォーレン
販売元:あすなろ書房
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「ヒトラーのはじめたゲーム」アンドレア・ウォーレン 林田康一・訳(あすなろ書房)2007年11月発行.191p.1300円

ポーランドのグディニアで裕福な生活を送っていたユダヤ人のジャック・マンデルバウム。彼は、1942年6月、15歳の時、ナチスによって家族と引き離され、強制収容所に送られます。いつ殺されるかわからない恐怖、飢えと寒さ、劣悪な環境での過酷な労働。強制労働収容所を移動しながら、ジャックは3年間に及ぶ収容所生活を生き延びます。その後アメリカへ移住したジャックの回想を挟みながら進んでいく体験記録です。

最年少で一所懸命に働くジャックは、同じ収容所にいるアーロンから、「ここで起こることはすべてゲームだと思え。どんな目にあってもくよくよしてはいけない。うまくゲームをするんだ。そうすれば、ナチスより長く生きることができるかもしれない」と言われます。“これはゲームなんだ”というのは、映画「ライフ・イズ・ビューティフル」の中でも、お父さんが幼い息子を怖がらせないように演技をし同じ言葉を言ってましたね。

そして、餓死しないために余分な食べ物を手に入れろ。注目されることはするな。友だちを大切にしろ(なぜなら、友だちなしでは生きのびることはできないから。その言葉通り、その後モーニクという友だちを得て支えあいます)、(病気にならないように)体を清潔にしておくこと…と、強制収容所で生きるためのルールを学びます。

強制収容所の中には、監視兵の他に、バラック(居住棟)に住む百人ほどの囚人を監督している“カポ”という存在があったとはじめて知りました。囚人をすぐそばで見張りささいなことで暴力をふるうその男もまた囚人で(中にはユダヤ人もいたという)、骨と皮だけの囚人たちの中で、彼だけはびっくりするほど太っていたといいます。

ホロコーストの話は、読むのがつらいんですけど、やっぱり読んで欲しい。中学生くらいから。

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「木かげの家の小人たち」いぬいとみこ

木かげの家の小人たち Book 木かげの家の小人たち

著者:いぬい とみこ,吉井 忠
販売元:福音館書店
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「木かげの家の小人たち」1967年7月発行.288p.いぬいとみこ・作 吉井忠・画(福音館書店)1600円

大正時代の初め頃。イギリス生まれのミス・マクラクランは、母国に帰る前、森山家の少年・達夫に、“小さい人たち”と空色のコップを預けます。のちに四人家族となった小人たちのために、空色のコップで毎日ミルクを運びつづける役目は、その後、代々森山家の人々の手へと引き継がれていきます。

昭和に入り戦争の足音が近づいた頃、小人たちにミルクを運んでいたのは、達夫の娘・ゆりでした。空襲が激しくなり、ゆりは四人の小人たちを連れて、信州の野尻のおばさんの家に疎開します。戦況が悪くなり、ミルクを手に入れることもむずかしくなったゆりは、小人たちの命を無事に守り通すことができるのでしょうか?

小人の物語というと、メアリ・ノートンの「床下の小人たち」が思い出されます。必要なものは人間たちから“借りながら”気付かれないように暮らしている「床下の小人たち」とは違い、この物語では、小人たちは森山家の人々の手からミルクをもらって暮らしています。

敵国にあたるイギリス生まれの小人たちを守っていこうとするゆりも、戦争に反対し逮捕される父親の達夫も、自分の大切なものを守るために、信念を貫き通します。小人たちも閉じこもり守られているばかりではなく、息子と娘のロビンとアイリスは、自らの意志で外の世界に出て行き友だちをつくり、動き出していきます。

1967年に書かれたファンタジーですが、今読んでもおもしろかったですね。

ロビンとアイリスのその後は、「くらやみの谷の小人たち」(福音館書店)という物語になっています。

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「花豆の煮えるまで」安房直子

花豆の煮えるまで―小夜の物語 (偕成社ワンダーランド) Book 花豆の煮えるまで―小夜の物語 (偕成社ワンダーランド)

著者:味戸 ケイコ,安房 直子
販売元:偕成社
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「花豆の煮えるまで」安房直子作 味戸ケイコ・絵(偕成社)1993年3月発行.142p.1200円

山奥の温泉宿に住む小夜には、お母さんがありません。小夜の母さんは、山んばの娘。小夜が生まれた後、風になって里へ帰ってしまいました。山の向こうの山んばの村にはだれも訪ねることはできないといいます。おばあさんは、お父さんとお母さんが出会ったいきさつを、花豆を煮ながら小夜に話し始めます…。

山んばの血をひく小夜は、風になって山をかけめぐり、鬼の子と遊び、朴の木の精と話をします。山の娘、小夜の不思議なお話です…。

とても好きな作品でした。小夜のお母さんに会いたい気持ちとお母さんと同じ血をひいていることの誇らしさ、そして風になって小夜を見守るお母さんの愛情を感じながら、読み進みました。

安房直子さんの物語は、味戸ケイコさんの絵とのコンビが多いですね。お二人が作り出す世界は、この世でありながらこの世でないような美しさと、寂しさに包まれているような気がします。

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「リバウンド」

リバウンド Book リバウンド

著者:エリック・ウォルターズ
販売元:福音館書店
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「リバウンド」エリック・ウォルターズ作 小梨直・訳 深川直美・画(福音館書店)2007年11月発行.340p.1600円

不良グループから足を洗いたいショーンと、交通事故で車椅子生活を送るデーヴィッド。初対面からけんかをした二人が、バスケットを通じて少しづつ歩み寄り、自分ひとりでは踏み出せなかった一歩を踏み出すまでの友情物語。

よかったです…、とても。いつも強気で平気なふりをしているデーヴィットが、どんなに絶望しどんなに葛藤してきたのか。そんなデーヴィットに対して、“なんのふりをするつもりもない、だだ、友達でいたい”という、ショーンの言葉に泣けました…。

読んでいて、車椅子の人に対するなにげない態度が、どんなに彼らを傷つけるのか…に、気づかされましたた。

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「ハーメルンの笛吹きを追え!」

ハーメルンの笛吹きを追え! Book ハーメルンの笛吹きを追え!

著者:ビル リチャードソン
販売元:白水社
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「ハーメルンの笛吹きを追え!」ビル・リチャードソン著 代田亜香子訳(白水社)2004年4月発行.261p.1600円

「ハーメルンの笛吹き」の伝説をモチーフにしたファンタジーです。

笛吹きと共に行方不明になった子どもたち…。取り残されたのは、楽しみにしていた11歳の誕生日=イレブニングの朝を境に耳が聞こえなくなってしまったペネロピーと、目の見えないアロウェイ。ディープ・ドリーミングという才能を持つペネロピーは、笛吹きをさがし子どもたちを救う使命を負って、夢の中を旅することになります…。

101歳になったペネロピーが、11歳の時に起きたことと、現在の自分を交互に語っていきます。

笛吹きの正体と、連れ去られた子どもたちがどうなったのか?作者なりの答えが明かされます。児童文学というより、ヤングアダルト文学といった方がいいかもしれません。

ねずみの大群におびやかされていたハメルンの町にやってきた笛吹き男。男はねずみを退治するが、約束した報酬を払ってもらえなかった仕返しに、子どもたちを連れ去った…。

「ハーメルンの笛吹き」の伝説は、絵本にもなっていますね。

Book ハメルンの笛ふき

著者:ロバート・ブラウニング
販売元:文化出版局

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「ハメルンの笛ふき」ロバート・ブラウニング詩 矢川澄子訳 ケート・グリーナウェイ絵(文化出版局)1976年9月発行.48p.25×22㎝.1600円

グリムが収集した伝説もありますが、こちらはイギリスの代表的な詩人ロバート・ブラウニングの手によるもの。リズムがいい言葉によるシンプルなストーリー。そしてなによりケート・グリーナウェイの繊細な絵が中世のヨーロッパを感じさせます。個人的には、この絵本が一番好きです。

この本の中ではこのできごとが起きたのは、1376年7月22日(一般的には、1284年6月26日とされているようです)、ひとり残されたのは、足が悪くて遅れた少年ということになっています。

こちらは、「しろいゆき あかるいゆき」「みんなのベロニカ」などの絵本を描いたデュボアザンによるもの。

ハーメルンの笛ふき男 Book ハーメルンの笛ふき男

著者:ロバート ブラウニング,ロジャー デュボアザン
販売元:童話館出版
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「ハーメルンの笛ふき男」リバート・ブラウニング作 ロジャー・デュボアザン絵 長田弘・訳(童話館出版)2003年9月発行.40p.32×24cm.1600円

こちらもロバート・ブラウニングによるもので、上記の文化出版局「ハメルンの笛ふき」と基本的には同じストーリーです。こちらの本の方が大判で、使われている言葉もわかりやすくなっているので、子どもの読み聞かせによいでしょう。

後日談として、トランシルヴァニア地方に、地元の人たちとはまるでちがう、その土地生まれではない一族がいた。彼らは、もともとは遠い昔、ハーメルンの町から連れ出され、閉じ込められた地下牢から逃げ出して、その土地に住みだしたといわれている…と記されています。

Book ハーメルンの笛ふき

著者:エロール・ル カイン,サラ コリン,ステファン コリン
販売元:ほるぷ出版
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「ハーメルンの笛ふき」サラ&ステファン・コリン文 エロール・ル・カイン絵 かなせきひさお訳(ほるぷ出版)1989年11月発行.33P.31×22㎝.1200円

エロール・ル カインの描いた「ハーメルンの笛ふき」は、上記「ハメルンの笛ふき」の余白の多い絵とは対照的で、びっちりと描き込まれた緻密な絵です。この絵本の“まだら服の笛ふき男”の容姿は、悪魔っぽいですよね。

巻末に“ほんとうはなにがおこったか?”として、ハーメルンの伝説についての解説が設けられています。1284年6月26日、ハーメルンで130人の子どもがいなくなりついに戻ることがなかったというのは、史実だったようです。ただ、ねずみ騒動とは無関係だったものが、16世紀になってネズミ捕りの話の一つが「神がくしにあった子どもたち」の話と結びついた(いわゆる後づけされたのですね)と書かれています。

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「木馬のぼうけん旅行」

木馬のぼうけん旅行 (福音館文庫) Book 木馬のぼうけん旅行 (福音館文庫)

著者:ペギー フォートナム,アーシュラ ウィリアムズ
販売元:福音館書店
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「木馬のぼうけん旅行」アーシュラ・ウィリアムズ作 石井桃子訳 ペギー・フォートナム画(福音館文庫)2003年1月発行.272p.700円

面白かった!

主人公は、ピーダーおじさんがつくった小さな木馬。ピーダーおじさんのそばを離れたくないと泣いていた木馬が、木のおもちゃが売れなくなり、生活に困っていたピーダーおじさんのために、世の中に出てお金もうけをしようと決心します…。

小さな木馬は、お金を貯めてピーダーおじさんのもとに帰って静かに暮らしたいという望みを持ちながら、おじさんの家からどんどんどんどん遠ざかり、意図しない方向へとものごとがすすんでいきます。途中稼いだお金を何度も失ったり、足や首が取れてしまったりと、まさに満身創痍で波乱万丈の旅!よく働き正義感の強い木馬の存在は、応援せずにはいられなくなります。最後まで飽きさせない展開で、非常にテンポがいい!小学校4年生くらいから読めるかな。おすすめです。

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「イスカンダルと伝説の庭園」

イスカンダルと伝説の庭園 Book イスカンダルと伝説の庭園

著者:ジョアン・マヌエル・ジズベルト,アルベルト・ウルディアレス,宇野 和美
販売元:徳間書店
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「イスカンダルと伝説の庭園」ジョアン・マヌエル・ジズベルト作 宇野和美訳(徳間書店)1999年12月発行.192p.1300円

世継ぎに恵まれなかったアラビアの王アルイクシールは、後世に名を残すため、世界一美しい庭園を造ることを思い立った。そこで王は、当代随一の建築師イスカンダルに仕事を依頼した。イスカンダルは持てる力の限りを尽くして庭造りに没頭したが、王は密かなもくろみを持っていた…。

読みながら、こんな風に展開していくのかな…という予想が、次々と裏切られました。話は二転三転し、目が離せません。イスカンダルが造りあげた庭の描写にうっとりしました。

ちなみに設定された国も人物も架空の物語です。中学生ぐらいから大人まで。

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「ベラスケスの十字の謎」

ベラスケスの十字の謎 Book ベラスケスの十字の謎

著者:エリアセル カンシーノ
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「ベラスケスの十字の謎」エリアセル・カンシーノ作 宇野和美訳(徳間書店)2006年5月発行.208p.1400円

とてもおもしろかった!

17世紀スペイン。父に売られ宮廷に連れてこられた少年ニコラスが語り手。

ベラスケスの名画「待女たち(ラス・メニーナス)」に秘められた二つの謎、

-ベラスケスの胸の赤い十字の紋章は、後から描かれたものとされているが、だれが描き入れたものなのか?また、「待女たち」に描かれた12人の人物の中で、一人だけ身元がわからない男がいるが誰なのか?-

を史実に絡めながら、解き明かしていくファンタジーです。

私のように世界史にも美術にも疎くても十分に楽しめます。ミステリー仕立てで、主人公ニコラスの成長物語にもなっています。中学生くらいから、おとなまで。おすすめです。

※ちなみに、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」という曲は、ルーヴル美術館にあるベラスケスのマルガリータ王女の肖像画からインスピレーションを得て、作曲したと言われているそうです。

「ベラスケスの十字の謎」の語り手ニコラスは、背が伸びない体-いわゆる小人と呼ばれた人物でした。当時そのような人たちが宮廷にあつめられ、王族や貴族の気晴らし役にされていたという文章を読んだ時、思い出したのがこの本です。

宮廷のバルトロメ Book 宮廷のバルトロメ

著者:ラヘル・ファン コーイ
販売元:さえら書房
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「宮廷のバルトロメ」ラヘル・ファン・コーイ作 松沢あさか訳(さ・え・ら書房)2005年4月発行.270p.1600円

バルトロメは、異形の体に生まれついた10歳の少年。王女マルガリータの御者を務める父親は、そんな息子を恥ずかしがり、決して人前に出そうとはしなかった。しかし運命のいたずらか、バルトロメは王女マルガリータのおもちゃ“人間犬”として、宮廷に連れていかれることになる…。

はじめに読んだ時は、恥ずかしながらベラスケスも名画「ラス・メニーナス」も知りませんでした。ただひたすら人間扱いされてこなかったバルトロメが不憫でつらかった…。こっそり読み書きを習いに行くのを応援し、宮廷画家のヴェラスケスの画室で温かく迎えられたことを喜び、彼を救い出す計画をドキドキしながら読みました。

今回「ベラスケスの十字の謎」を読んだ後に再読した時は、重複して登場するニコラス(「宮廷のバルトロメ」では憎まれ役ですが)、ヴェラスケス、マリー・バルボラ、ファン・デ・パレハなど、彼らの人物像を肉づけしながら読めました。名画「ラス・メニーナス」が描かれる過程も、「ベラスケスの十字の謎」とは違った解釈で面白かったし。

時代背景など予備知識があって読むのとそうでないのとは、やっぱりおもしろさが違うと思います。あとがきなども一切なく、そのあたりについてなにも触れられていないのは、中高生あたりから読んでもらいたい本の作りとしては少し不親切かなとも思いました。

ベラスケスの奴隷だった黒人ファン・デ・パレハを主人公とした物語が、

Book 赤い十字章―画家ベラスケスとその弟子パレハ

著者:エリザベス・ボートン デ・トレビノ
販売元:さ・え・ら書房
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「赤い十字章」エリザベス・ボートン・デ・トレビノ作 定松正(さ・え・ら書房)1993年11月発行.159p.1236円

画家ベラスケスとその弟子パレハの信頼と友情の物語とでもいいましょうか。

17世紀、スペインでは奴隷は絵を描いてはいけないという法律があったそうです。それでも絵を描きたいと一人でこっそり絵の勉強をしていたパレハに対して、ベラスケスは自由を与え、パレハはベラスケスの助手として最後まで忠実に仕えたといいます。

ベラスケスが、パレハを自由の身にするという手紙を書き手渡す場面にはグッときました。どの本を読んでもベラスケスは好人物に描かれていますね。断片的にしかわかっていない彼らの生涯を、どのように想像し描いていくか…、読み比べてみるとそれぞれの作者の個性や思いが感じられて面白いです。そして、この本の中でも「ラス・メニーナス」の赤い十字章はパレハが描き入れたとなっていました。

この作品は、1966年に全米最優秀児童図書賞であるニューベリー賞を受賞しています。

名画「ラス・メニーナス」と、ベラスケスが描いたパレハの肖像画をカラーでみたいと思う方は、

Book はじめてであう絵画の本 (5)

著者:アーネスト・ラボフ,みつじ まちこ
販売元:あすなろ書房
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“小学生から大人まで楽しめる美術入門シリーズ”と銘打って、各巻1人ずつ16人の画家を紹介したこのシリーズ。第5巻目は、「ベラスケス」を取り上げています。

「はじめてであう絵画の本 5(ベラスケス)」あーネスト・ラボフ作 みつじまちこ訳(あすなろ書房)1995年4月発行.32p.29×23㎝.1650円

「ラス・メニーナス」をめぐっては、いまなお解決されていない謎が残っているといわれているそうですが、そのような絵画の謎をあつめたのが、

迷宮美術館 アートエンターテイメント Book 迷宮美術館 アートエンターテイメント

著者:NHK『迷宮美術館』制作チーム
販売元:河出書房新社
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「迷宮美術館(アートエンターテインメント)」NHK『迷宮美術館』制作チーム著(河出書房新社)2006年3月発行.95p.933円

NHKBSテレビ「迷宮美術館」という番組で放送されたものをまとめたもの。

“「ラス・メニーナス」では、一国の王をなぜ鏡の中に描いたのか?”、“絵の中でベラスケスが向かっているキャンパスには何が描かれてているのか?”

その謎が解き明かされています。CGで作製されている「ラス・メニーナス」が描かれた構図は、非常に面白く納得できるものとなっています。

                ※番組ホームページは、こちらから。

王女マルガリータのその後は…。

ハプスブルク家の女たち(ヨーロッパ随一の名家の栄華をたずねるウィーンとオーストリア歴史紀行)」海野弘他(学習研究社)1994年発行.112p.1600円

スペイン国王フェリペ四世の次女マルガリータは、14歳でウィーンのレオポルト一世と政略結婚します。それでも夫のレオポルト一世とはたいそう仲が良かったそうですが、22歳で短い生涯を閉じています。

王妃たちのドラマと重ねて、ウィーンやオーストリア各地をめぐる写真紀行です。

今も残る王宮や修道院の豪華さにうっとり。エリザベート、テレジア、マリーアントワネット(テレジアの娘)など、これまで点として知っていたことが、自分の中で線として少し繋がりました。それにしてもエリザベートって、ホントに美人ですね…。

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「まぼろしの白馬」

まぼろしの白馬 新版 (岩波少年文庫 142) Book まぼろしの白馬 新版 (岩波少年文庫 142)

著者:エリザベス・グージ
販売元:岩波書店
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「まぼろしの白馬」エリザベス・グージ作 石井桃子訳(岩波少年文庫)新版2007年1月発行.330p.720円

1842年、ロンドン生まれでロンドン育ちのマリアは、両親を亡くし孤児となったため、家庭教師のヘリオトロープ先生と一緒に、まだ一度も会ったことのない肉親、ベンジャミン卿が住んでいるシルバリーデュー村の領主館へと移り住みます。

温かく迎えられたマリアは、持ち前の明るさで新しい土地に慣れていきますが、この領主館にはなにやら秘密の歴史があるようで…。

まっすぐで好奇心いっぱいの13歳の少女が、村を再興させる物語。1946年に、その年イギリスで出た児童文学の最優秀作品、カーネギー賞を受賞した作品。

現実の中に、ファンタジーの要素がちりばめられています。60年前の作品なので、非常にクラシカルな香りがするのですが、とっても好きでしたね。もちろんハラハラする場面もあるんですが、読んでいる間、ずっと安心感に包まれているというのでしょうか、幸せな気持ちでいられました。最後、あっちもこっちもハッピーエンドで、大満足!

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