「ベラスケスの十字の謎」エリアセル・カンシーノ作 宇野和美訳(徳間書店)2006年5月発行.208p.1400円
とてもおもしろかった!
17世紀スペイン。父に売られ宮廷に連れてこられた少年ニコラスが語り手。
ベラスケスの名画「待女たち(ラス・メニーナス)」に秘められた二つの謎、
-ベラスケスの胸の赤い十字の紋章は、後から描かれたものとされているが、だれが描き入れたものなのか?また、「待女たち」に描かれた12人の人物の中で、一人だけ身元がわからない男がいるが誰なのか?-
を史実に絡めながら、解き明かしていくファンタジーです。
私のように世界史にも美術にも疎くても十分に楽しめます。ミステリー仕立てで、主人公ニコラスの成長物語にもなっています。中学生くらいから、おとなまで。おすすめです。
※ちなみに、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」という曲は、ルーヴル美術館にあるベラスケスのマルガリータ王女の肖像画からインスピレーションを得て、作曲したと言われているそうです。
「ベラスケスの十字の謎」の語り手ニコラスは、背が伸びない体-いわゆる小人と呼ばれた人物でした。当時そのような人たちが宮廷にあつめられ、王族や貴族の気晴らし役にされていたという文章を読んだ時、思い出したのがこの本です。
「宮廷のバルトロメ」ラヘル・ファン・コーイ作 松沢あさか訳(さ・え・ら書房)2005年4月発行.270p.1600円
バルトロメは、異形の体に生まれついた10歳の少年。王女マルガリータの御者を務める父親は、そんな息子を恥ずかしがり、決して人前に出そうとはしなかった。しかし運命のいたずらか、バルトロメは王女マルガリータのおもちゃ“人間犬”として、宮廷に連れていかれることになる…。
はじめに読んだ時は、恥ずかしながらベラスケスも名画「ラス・メニーナス」も知りませんでした。ただひたすら人間扱いされてこなかったバルトロメが不憫でつらかった…。こっそり読み書きを習いに行くのを応援し、宮廷画家のヴェラスケスの画室で温かく迎えられたことを喜び、彼を救い出す計画をドキドキしながら読みました。
今回「ベラスケスの十字の謎」を読んだ後に再読した時は、重複して登場するニコラス(「宮廷のバルトロメ」では憎まれ役ですが)、ヴェラスケス、マリー・バルボラ、ファン・デ・パレハなど、彼らの人物像を肉づけしながら読めました。名画「ラス・メニーナス」が描かれる過程も、「ベラスケスの十字の謎」とは違った解釈で面白かったし。
時代背景など予備知識があって読むのとそうでないのとは、やっぱりおもしろさが違うと思います。あとがきなども一切なく、そのあたりについてなにも触れられていないのは、中高生あたりから読んでもらいたい本の作りとしては少し不親切かなとも思いました。
ベラスケスの奴隷だった黒人ファン・デ・パレハを主人公とした物語が、
「赤い十字章」エリザベス・ボートン・デ・トレビノ作 定松正(さ・え・ら書房)1993年11月発行.159p.1236円
画家ベラスケスとその弟子パレハの信頼と友情の物語とでもいいましょうか。
17世紀、スペインでは奴隷は絵を描いてはいけないという法律があったそうです。それでも絵を描きたいと一人でこっそり絵の勉強をしていたパレハに対して、ベラスケスは自由を与え、パレハはベラスケスの助手として最後まで忠実に仕えたといいます。
ベラスケスが、パレハを自由の身にするという手紙を書き手渡す場面にはグッときました。どの本を読んでもベラスケスは好人物に描かれていますね。断片的にしかわかっていない彼らの生涯を、どのように想像し描いていくか…、読み比べてみるとそれぞれの作者の個性や思いが感じられて面白いです。そして、この本の中でも「ラス・メニーナス」の赤い十字章はパレハが描き入れたとなっていました。
この作品は、1966年に全米最優秀児童図書賞であるニューベリー賞を受賞しています。
名画「ラス・メニーナス」と、ベラスケスが描いたパレハの肖像画をカラーでみたいと思う方は、
“小学生から大人まで楽しめる美術入門シリーズ”と銘打って、各巻1人ずつ16人の画家を紹介したこのシリーズ。第5巻目は、「ベラスケス」を取り上げています。
「はじめてであう絵画の本 5(ベラスケス)」あーネスト・ラボフ作 みつじまちこ訳(あすなろ書房)1995年4月発行.32p.29×23㎝.1650円
「ラス・メニーナス」をめぐっては、いまなお解決されていない謎が残っているといわれているそうですが、そのような絵画の謎をあつめたのが、
「迷宮美術館(アートエンターテインメント)」NHK『迷宮美術館』制作チーム著(河出書房新社)2006年3月発行.95p.933円
NHKBSテレビ「迷宮美術館」という番組で放送されたものをまとめたもの。
“「ラス・メニーナス」では、一国の王をなぜ鏡の中に描いたのか?”、“絵の中でベラスケスが向かっているキャンパスには何が描かれてているのか?”
その謎が解き明かされています。CGで作製されている「ラス・メニーナス」が描かれた構図は、非常に面白く納得できるものとなっています。
※番組ホームページは、こちらから。
王女マルガリータのその後は…。
「ハプスブルク家の女たち(ヨーロッパ随一の名家の栄華をたずねるウィーンとオーストリア歴史紀行)」海野弘他(学習研究社)1994年発行.112p.1600円
スペイン国王フェリペ四世の次女マルガリータは、14歳でウィーンのレオポルト一世と政略結婚します。それでも夫のレオポルト一世とはたいそう仲が良かったそうですが、22歳で短い生涯を閉じています。
王妃たちのドラマと重ねて、ウィーンやオーストリア各地をめぐる写真紀行です。
今も残る王宮や修道院の豪華さにうっとり。エリザベート、テレジア、マリーアントワネット(テレジアの娘)など、これまで点として知っていたことが、自分の中で線として少し繋がりました。それにしてもエリザベートって、ホントに美人ですね…。