小説

「やんごとなき読者」アラン・ベネット

「やんごとなき読者」アラン・ベネット・著 市川恵里・訳(白水社)2009年3月発行.169p.1900円

おもしろかった!!

エリザベス女王が読書にハマったら…という設定からしておもしろそうでしょ。

ある日、女王は吠え続ける犬の詫びを言おうと、バッキンガム宮殿の裏庭に停まっていた移動図書館の車に乗り込んだ。その時、礼儀として1冊本を借りたことがきっかけとなって、読書に夢中になっていく。

女王は移動図書館で出会った、厨房で働く本好きの少年ノーマンを昇進させ、読書の指南人として、自分のそばに置いた。

しかし、女王は読書にのめりこんでゆくにつれて、公務の手を抜くようになり、側近たちには女王の読書は歓迎されない…。

80歳近くになって読書の喜びに目覚めた女王。多くの本を読んで、視野が広がり、他人の気持ちを思いやるようになる。

しかも女王にはこれまで世界中を見て歩き、さまざまな著名人に会ってきた経験がある。

人間的に成長した女王は、やがて自分で文章を書くようになり、ついには大きな決断をする…。

“一冊の本は別の本へとつながり、次々に扉が開かれてゆくのに、読みたいだけ本を読むには時間が足りない”…。

本を読む楽しみがどんどん広がっていく様子に、わかるわかるとうなずくところ多し。

女王の読書熱に振り回される側近たちにクスッと笑い、女王の辛辣な文学批評にニヤリとしながらも、次第に読むことと書くこと、そして女王という立場についても考えさせられます。

ラスト。ええっ!!と驚いたところで、ストンと終わるところも絶妙。

おすすめです。

やんごとなき読者 やんごとなき読者

著者:アラン ベネット
販売元:白水社
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「殺人者の涙」アン=ロール・ボンドゥ

「殺人者の涙」アン=ロール・ボンドゥ・著 伏見操・訳(小峰書店)2008年12月発行.224p1500円

南米チリ・最南端の地の果て、めったに人が来ることがないポヴェルド農場。

ある日、その農場におたずね者の人殺し、アンヘル・アレグリアが逃亡生活を終えるためにやってきた。彼はなんのためらいもなくポロヴェルド夫婦を殺した後、その家に住み着き、殺すのをためらった夫婦の子どもパオロと一緒に暮らし始める…。

畑を耕し、ヤギやニワトリを育てる生活をしているうち、親もなくたった一人で路上で生きてきたアンヘルの中に、初めて愛情という感情が芽生え、パオロが彼にとってかけがえのない存在になっていく。

1年後、最果てのポロヴェルド農場に、都会育ちの裕福な家の青年が身を隠すためにやってきた。パオロが放った一言で、アンヘルはルイスを始末することをやめ、三人で暮らすようになる。

ポオロの世話をしご飯を食べさてくれるアンヘルと、文字や詩の美しさを教えてくれるルイス。

アンヘルは、ポオロがルイスになつくことに嫉妬を覚え、ルイスが朗読する詩に涙するなど、今まで知らなかった感情にであうようになる。

しかし、三人が市場に行くために南に向かい、そこでルイスが絵描きのデリアと恋に落ちてから状況が変わっていく。

ルイスに裏切られ、アンヘルはパオロを連れて森の中に逃げる。パオロを終わりのない自分の逃亡の道連れにしダメにしてはいけない、そう思ったアンヘルは、森の中で一人で暮らす老人リカルドにパオロを託して姿を消すことを決断する。しかし、警察の追跡の手は、アンヘルのすぐ間近に迫っていた…。

不器用なアンヘルの愛情は、時として狂おしいほどで切ない。

アンヘルは35年生きてきて初めて人を愛することを知り、ポオロは母親からは感じられなかった愛情をアンヘルから感じ取る。

自分の両親を殺した男と一緒に暮らすという奇妙な生活。しかしそこから、アンヘルは人として生き直し、ポオロは人として成長していく。

衝撃的なシーンも数あるけれど、読後いやな印象が残らないのは、二人の絆がしっかりと心の中に残るからだ。

 殺人者の涙 殺人者の涙
販売元:セブンアンドワイ
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「虎と月」柳広司

「虎と月」柳広司(理論社)2009年2月発行.250p.1400円

父は虎になった。幼い頃から、そう聞かされて育った。父の名は李徴。

虎になった父に会ったという、父のかつての友人・袁参からもらった手紙には、父がその場で詠ったという一遍の漢詩が書かれていた。

父が虎になったのだとすれば、息子の自分も、いつか虎になってしまうのではないかと不安になった14歳のぼくは、父はなぜ虎になったのか、その理由をさがすために、南へと旅に出た…。

中島敦氏の『山月記』から生まれた物語。

虎になった真相を、ミステリー仕立てで読ませます。

後半、一気に読ませる鮮やかな謎解きでは、なるほどそうきたかと納得、納得。

『虎の月』は、李徴はなぜ虎になったのか、その息子が答えを探しに旅に出るという設定なので、もとになった『山月記』を先に読んだ方が、より面白く読めます。

虎と月 #ミステリーYA!# 虎と月 #ミステリーYA!#

著者:柳 広司
販売元:理論社
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「少年少女日本文学館17 ちいさこべ・山月記」(講談社)1986年11月発行.294p.2000円

中国・唐の時代に、官職を退き、詩人として名を成すつもりがうまくいかず、次第に世と離れ、人と遠ざかり、臆病な自尊心と尊大な羞恥心から、とうとう虎の姿になってしまった男・李徴の物語。

遠い昔、学校で習ったことを思い出しました…。原文は難しい言葉が多くて読みにくいのですが、この本は説明注釈付きなのが嬉しいです。

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「落窪物語」

「落窪物語(少年少女古典文学館 3)」氷室冴子(講談社)1993年12月発行.301p.1800円

継子いじめにあっていた姫のシンデレラストーリー。

最後まで、ど~なるの??と、ハラハラドキドキしながら読みました。なんとも痛快で、おもしろかった!

皇族の血をひく、聡明で美しい娘は、実母の死後、継母にいじめられ、つらい日々を送っていた。床の落ちくぼんだ粗末な部屋をあてがわれ、おちくぼの君と呼ばれていた姫は、みずぼらしい身なりで、縫いものをおしつけられ、こき使われていた。

父親の中納言は、妻の北の方にまるめこまれて、言いなり。おちくぼ姫の力になってくれるのは、母君が生きていた頃から仕えてくれている侍女の阿こぎだけ。

阿こぎの夫・帯刀から、おちくぼ姫の身の上を聞いた右近の少将は、興味をそそられ、屋敷のほとんどの者が石山詣でに出かけた時に忍のびこむ。美しい姫を見てすっかり心惹かれた少将と、彼が心の支えとなったおちくぼ姫は、密かに結婚する。

通う恋人ができたと感づいた北の方は、おちくぼ姫を物置部屋に閉じ込めて、貧しい年寄りと結婚させようと悪だくむ。

おちくぼ姫は、少将の手で中納言邸から無事に救い出され、幸せに暮らし始めた。その一方で、少将はおちくぼ姫への仕打ちを恨んで、北の方に仕返しを始め、中納言家は災厄続きとなる…。

最終的に、仲直りの立役者となるのは、北の方からつらい目に合わせられながらも、おっとりと心やさしいおちくぼ姫。おっとりとやさしい姫よりも、しっかり者で気の利く阿こぎや、どこまでも強気であっぱれな北の方のほうが、キャラクター的にはおもしろかったですね。

「なんて素敵にジャパネスク」を彷彿とさせる、生き生きとしたキャラクター、軽快に読ませていくテンポの良さは、現代語に訳した、今は亡き氷室冴子さんの力によるものが大きいでしょうか。

平安時代に書かれた原文、「落窪物語」の作者は、わかっていないそうです。

難しい言葉には、細やかな解説付き。中高生向きのシリーズですが、読みやすいし、大人が読んでもおもしろいです。

落窪物語 #少年少女古典文学館 3# 落窪物語 #少年少女古典文学館 3#

著者:氷室 冴子
販売元:講談社
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「大きな約束」椎名誠

「大きな約束」椎名誠(集英社)2009年2月発行.283p.1200円

シーナ家の父と息子の物語を描いた「岳物語」から25年。

その岳くんが結婚して子どもが生まれて、シーナさんも“じいじい”に…。

今年で65歳になるシーナさん。同級生は定年退職し、親しかった友人が亡くなり、老いを感じるようになった。

若い人たちと日本中をかけまわりながら、原稿を書き、サンフランシスコに住む孫の風太くんからの電話に、じいじいの声になって話をするのを楽しみしているシーナさんの日々の出来事が描かれていきます…。

後編にあたる「続 大きな約束」が5月に出版されています。読まなくちゃ。

孫の風太くんとの会話が、たまらなくかわいらしくて、“じいじい”じゃなくても、目尻が下がってしまいます。

シーナさんが作る、つけ汁にねぎと「辺銀食堂」の石垣辣油を大量に入れて食べる蕎麦がおいしそうでした。

大きな約束 大きな約束

著者:椎名 誠
販売元:集英社
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「岳物語」から「大きな約束」の間に書かれたシーナさんの私小説を、遡って読んでみました。

「春画」椎名誠(集英社)2001年2月発行.248p.1400円

実母が亡くなり、娘はニューヨーク、息子はサンフランシスコに住んでいる。家族の所在はバラバラになった。

自分が生まれた家族と、自分がつくってきた家族。

“家族がみんな揃って生活している時間など、本当にうたかたのものでしかないのだ”という椎名さんの言葉を、自分自身が、しみじみ実感するこの頃であります…。

シーナさんと言えば、大勢で旅に行き、焚き火を囲みながらお酒を飲んで大騒ぎしているようなイメージを勝手に持っていましたが、この本の中では全く違います。

私小説って、どこまでホントで、どこからフィクションなんだろうと、ふと思いました。

春画 春画

著者:椎名 誠
販売元:集英社
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「かえっていく場所」椎名誠(集英社)2003年4月発行.256p.1400円

30年住んでいた東京郊外の家から、都会の真ん中に引っ越した。老いも見え隠れする。体調がすぐれなかった妻は、チベットに行き、元気になった…。

全体的に重々しい雰囲気だった前作「春画」よりも、多少明るいトーンに。

お互い旅の多い夫婦、遠く離れて暮らす娘と息子…。遠く離れた場所にいても、家族4人の絆を感じさせました。

かえっていく場所 かえっていく場所

著者:椎名 誠
販売元:集英社
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「弁護側の証人」小泉喜美子

「弁護側の証人」小泉喜美子(出版芸術社)1993年11月発行.251P.1500円

弁護側の証人 集英社文庫  弁護側の証人 #集英社文庫#

著者:小泉 喜美子
販売元:集英社
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書影は集英社文庫版ですが、図書館で借りた1993年出版の出版芸術社版で読みました。昭和38年初出のミステリ。“web本の雑誌”のこちらの記事を見て、読んでみました。

ストリッパーのミミィ・ローイこと漣子は、八島財閥の放蕩息子・杉彦に見染められて結婚する。しかし、八島の家に入ってみると、義父、義姉夫婦、女中、お抱えの医者と弁護士…と曲者ぞろい。そんな折、当主の龍之助が殺された…。

物語も終盤にさしかかった第十一章を読んでいて、ええっっ!!と驚愕…。私の読み間違えかと思い、ページを戻り、序章を読み直してみて、そんな仕掛けがしてあったとは…と驚きました。こんな風に騙されるの…、好きです。

集英社文庫で復刊されたようですね。なんの先入観も持たずに読むのがいいでしょう。おもしろいです。ぜひ一読を。

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「一回こっくり」立川談四楼

「一回こっくり」立川談四楼(新潮社)2008年9月発行.186p.1400円

一回こっくり 一回こっくり

著者:立川 談四楼
販売元:新潮社
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著者は、作家としても活躍している落語家の立川談四楼さん。

落語は聞いたことがないのですが、何年か前、NHK-BS「週刊ブックレビュー」の公開録画を見に行った時の書評ゲストの一人が談四楼さんでした。噺家さんという職業柄か、話は上手いし、別のゲストのフォローをしながら、盛り上げ役にもなるという…とてもいい印象を持って帰ってきたことを思い出しました。

そして、この「一回こっくり」。すっごくよかったです。立川談春さんの「赤めだか」もおもしろかったですが、こちらは上手いなぁ~というのが感想です。ぐいぐい読まされました。

小説の形をとっていますが、主人公の大工の長男・正昭は、談四楼さん自身でしょう。客観的な視点から抑えた筆で描いていきます。

10歳の少年時代から始まり、テレビで魅了された師匠に入門。真打昇進試験に落ち、それをきっかけに、師匠が落語協会脱退を宣言…。

そして、最終章では、それまで物語の大きな柱として描かれてきた弟と母の死、そして彼の半生が全て凝縮、昇華したような新作古典落語が出来上がっていくのです。この本のタイトルと同じ「一回こっくり」は、実際に高座にかけてる演目なんですね。

落語を知らなくても、ぜひおすすめしたいです。

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「戸村飯店青春100連発」瀬尾まいこ

戸村飯店青春100連発 Book 戸村飯店青春100連発

著者:瀬尾 まいこ
販売元:理論社
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「戸村飯店青春100連発」瀬尾まいこ(理論社)2008年3月発行.326p.1500円

大阪の下町にある中華料理店・戸村飯店。その店の二人の息子の青春記-成長物語です。

年子の兄弟は、見た目も性格も正反対。地元にどこかなじめない気持ちを持っていたクールなイケメン・兄ヘイスケは、家を出る目的で東京の専門学校へ行き、1ヶ月で中退。カフェでアルバイトをしている。高校3年の弟コウスケは、真っ直ぐでアツイ男。店の常連さんからもかわいがられ、将来は実家を継がなくてはと考えている…。

兄が東京に出ていってからの1年間を、兄と弟、それぞれの視点で交互に語られます。軽快に読ませる中にも、将来のこと、恋愛のことなど、二人それぞれの葛藤も丁寧に描かれます。

最初やな感じだなぁと思っていた兄が、だんだんといい印象に変わってきて、彼に肩入れしながら読んでいきました。弟がある報告をしに、兄の東京のアパートまで会いに行った場面、泣けました…。

瀬尾まいこさんって、大阪出身の方だったんですね。この「戸村飯店~」は、これまでの読んだ瀬尾作品とは、家族間の距離間みたいなものが、ちょっと違った印象を持ちました。こんな展開になるので…と先が読める部分もあったのですが、それでもおもしろかった!

二人のその後も是非読みたい!書いてくれないかなぁ~。

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「夫の火遊び」藤堂志津子

夫の火遊び Book 夫の火遊び

著者:藤堂 志津子
販売元:集英社
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「夫の火遊び」藤堂志津子(集英社)2007年11月発行.220p.1500円

桜ハウス」の続編です。

あれから一年…。かつて共同生活を送っていた彼女たちのその後が描かれます。

今回は四人が会うことはなく、語り手を変えながら、どんなに仲が良くても言えない四人それぞれの心情が語られます。

夫との離婚原因を明らかにする真咲。突然訪ねてきた久樹の娘に翻弄される遠望子、仰天な結婚生活を送る綾音、デパ地下で知り合った男と付き合う蝶子…。どれも恋愛に絡んだもので、そしてどれもビターなものになっていますが、読ませます。

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中島京子「平成大家族」

平成大家族 Book 平成大家族

著者:中島 京子
販売元:集英社
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「平成大家族」中島京子(集英社)2008年2月発行.301p.1600円

歯科医を引退した龍太郎と妻の春子、春子の母のタケ、10年間引きこもりを続ける長男の克郎の4人で暮らしていた緋田家。

そこに、事業を失敗し自己破産に追い込まれた長女の逸子夫妻とそのために有名私立中学から公立中学へと転校せざるとえなかった息子のさとるが同居することになる。さらに離婚し元夫の子ではない子を妊娠している次女の友恵までが戻ってきた…。

おもしろかったです!

彼ら8人+タケの訪問介護を担当する皆川カヤノを含めた9人それぞれの視点で語る、連作短編集の形で物語は進んでいきます。

家族には見せないそれぞれの事情や悩みを抱えていけれど、戻るところや受け入れてくれる人がいるというのはやっぱりありがたいことなんだと思わせてくれます。遠回りをしながらも、最後にはみんながまるくおさまって、よかった、よかったと本を閉じることができました。彼らのその後がまた読みたいですね。

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北森鴻「香菜里屋を知っていますか」

香菜里屋を知っていますか Book 香菜里屋を知っていますか

著者:北森 鴻
販売元:講談社
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「香菜里屋を知っていますか」北森鴻(講談社)2007年11月発行.196p.1600円

“三軒茶屋のビアバー”。ここのお店の魅力は、美味しい料理と、4種類のビール。そして、常連客が持ち込んでくる様々な謎に静かに耳を傾ける、マスター工藤哲也の存在だった…。

「花の下にて春死なむ」「桜宵」「蛍坂」と続いてきたこのシリーズも、本作が完結編となりました。最終話となる表題作では、香菜里屋が閉店、工藤が姿を消します…。そして、このシリーズで、最大の謎だった工藤の過去と、“香菜里屋”という店名の由来が明かされます。

常連客も結婚や転進で東京を離れたりと、それぞれの道へと別れていき、読みすすめていくうちに、香菜里屋もなくなるんだなという予感が少しずつ明確になっていくのが、切なかったです。

そんな中、閉店を惜しむかのように、冬弧堂の陶子さんや、雅蘭堂の越谷さん、蓮丈先生と、北森作品オールスター揃いぶみとなるのが、嬉しいところでした。

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「泣き虫ハァちゃん」

泣き虫ハァちゃん Book 泣き虫ハァちゃん

著者:河合 隼雄
販売元:新潮社
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「泣き虫ハァちゃん」河合隼雄(新潮社)2007年11月発行.189p.1300円

著者は、臨床心理学者で元文化庁長官の河合隼雄さん。残念ながら、昨年2007年夏に亡くなりました。

河合隼雄さんの最後の本となったこの作品は、小説の形をとっていますが、兵庫県丹波篠山での御自身の子ども時代の思い出を下敷きにしたものだと思われます。

主人公のハァちゃんは、男ばかりの六人兄弟の五番目、お兄さんたちに守られ、両親からの愛情に包まれ健やかに育って生きます。子ども時代の幸せな思い出は、その人のその後の人生の大きな支えとなるものなんだ…と言う言葉を思い出しました。

岡田知子さんによる水彩画(カラー)の挿絵も、物語の雰囲気にぴったりと合っています。

雑誌「家庭画報」の連載中に倒れられたので、書きたかった続きがあったのではないだろうか…、ハァちゃんのその後の成長を読みたかったなぁと心から思いました。

河合隼雄さんの三番目のお兄さん-子どもの頃の河合雅雄さんを主人公にした映画「森の学校」も涙なしには見られません…。いい映画です。河合隼雄さんをモデルにしたハァちゃんも、雅雄さんの幼い弟として登場しています。

              ※映画「森の学校」の公式サイトは、こちらから

少年動物誌 (福音館文庫) Book 少年動物誌 (福音館文庫)

著者:河合 雅雄
販売元:福音館書店
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「少年動物誌」河合雅雄(福音館文庫)2002年6月発行.320p.735円

映画「森の学校」の原作となった本です。主役の雅雄君を演じているのは、三浦春馬さん(少年の頃から爽やかでしたね)。

2つの雑誌で追悼特集を組んでいます…。

飛ぶ教室 12(2008冬)―児童文学の冒険 (12) Book 飛ぶ教室 12(2008冬)―児童文学の冒険 (12)

販売元:光村図書出版
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追悼特集:“河合さんと子どもの本の森へ”

お兄さんの河合雅雄さんによる「泣き虫ハァちゃん異文」、追悼エッセイ(司修さん、工藤直子さん、斎藤惇夫さん、伊藤遊さん他)、三林京子さんとの対談(未発表)、今江祥智氏×山中康裕氏の対談、そして河合隼雄さんが子ども時代を過ごした丹波篠山の風景写真も掲載されています。

考える人 №23(2008年冬号)」(新潮社)2008年2月発行.1400円

追悼特集:“さようなら、こんにちは河合隼雄さん”

小川洋子さんとの対談(未発表)、小林秀雄賞で一緒に選考委員をされていた方々による座談会、立花隆さんとの対談(再録)、追悼文(工藤直子さん、茂木健一郎さん、梅原猛さん・鶴見俊輔さん・中川新一さん・梨木香歩さん他)、河合隼雄氏の作品ブックガイド、エピソード年譜、奈良の御自宅の庭の写真も公開されています。

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三浦しをん「仏果を得ず」

仏果を得ず Book 仏果を得ず

著者:三浦 しをん
販売元:双葉社
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「仏果を得ず」三浦しをん(双葉社)2007年11月発行.284p.1500円

日本の伝統芸能・文楽の世界を舞台にした青春小説。

なにかひとつの道にうち込んでいる成長物語…が好きな私としては、まさにツボで、すっかりハマって読みました。おもしろかったです。勝田文さんによる表紙の絵もまさにイメージ通りで、健も兎一郎も師匠の銀大夫も、私の頭の中では、この顔で動いてました。(そのせいか、コミックを読んでいるような感覚にも陥りました…。)

私のように文楽に全くなじみがなくても大丈夫。するっと物語に入っていけて、個性豊かなキャラクターに笑わせられ、芸に対してあつく真っ直ぐな健を応援し、読み終わった時には文楽を観てみたい!と思わせてしまうんだから、すごいです。

文楽の奥の深さ、芸の世界で生きる厳しさと、そこで生きていこうとする人たちの真摯な気持ちがひしひしと伝わってきました。

あやつられ文楽鑑賞 Book あやつられ文楽鑑賞

著者:三浦 しをん
販売元:ポプラ社
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「あやつられ文楽鑑賞」三浦しをん(ポプラ社)2007年5月発行.265p.1600円

こちらは、文楽の世界にどっぷりはまった三浦しをんさんのエッセイです。

東京、大阪のみらなず、京都、愛媛にまで足を運んでの文楽観劇。「大夫」「三味線」「人形」それぞれの第一人者へのインタビューや楽屋拝見…、ウキウキワクワクドキドキのレポートが楽しい。

特におもしろかったのが、ストーリーのあちこちにつっこみを入れながら綴られる文楽作品の解説。わかりやすいし、おもしろすぎ。しをんさんが国語の先生だったら、古典がもっと身近なものになるのになぁ…なんてことを思いました。

是非「仏果を得ず」と合わせて読んでほしい本です。

文楽とはどのようなのもなのか。その背景を知ることで、よりおもしろさが深まります。

文楽 (物語で学ぶ日本の伝統芸能) Book 文楽 (物語で学ぶ日本の伝統芸能)

著者:平島 高文,江南 真理
販売元:くもん出版
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「物語で学ぶ日本の伝統芸能 4.文楽」(くもん出版)2004年4月発行.128p.27㎝.2800円

「仏果を得ず」で使われている「菅原伝授手習い鑑」「妹背山婦女庭訓」とは、どんな物語なのか、この本で読むことができます。

また、どんな舞台でどのように演じられているのか…が、初心者にもわかりやすく説明されています。

「仏果を得ず」の中ではあまり人形遣いが登場しませんが、「主遣い」「左遣い」「足遣い」の三人で動かす方法や、大夫と三味線が回転して登場する方法がわかります。健大夫と兎一郎はここに座るんだとわかっただけでも、ちょっと感激しました。

大夫が使用する床本の写真が掲載されていますが、なんと書いているのかまるでわからない独特の崩し文字に驚きました。

三浦しをんさんは、雑誌「yom yom」の中で働く女性を訪ね話を聞く連載をされていますが、この回のゲストは、女流義太夫三味線の鶴澤寛也さんです。

yom yom (ヨムヨム) 2007年 12月号 [雑誌] Book yom yom (ヨムヨム) 2007年 12月号 [雑誌]

販売元:新潮社
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「yom yom(ヨムヨム)12月号 vol.5」平成19年11月27日発行.680円

文楽は、すべて男性で演じられる芸能ですが、これを女性だけで上演する形も江戸時代からあるそうです。(女性の場合は、人形はなく大夫と三味線だけの素浄瑠璃という形になるそうです)。女性が語ると艶っぽく風紀を乱すということで、幕府から禁じられるのですが、登録を男名前にして生き延びてきた芸能なんだそうです。

鶴澤寛也さんは、大学時代、義太夫協会の「義太夫教室」のチラシがきっかけとなって、この世界にはいったとか。

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角田光代「八日目の蝉」

八日目の蝉 Book 八日目の蝉

著者:角田 光代
販売元:中央公論新社
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「八日目の蝉」角田光代(中央公論新社)2007年3月発行.346p1600円

新聞連載されていたもの(読売新聞)を、まとめたものです。

第1章は、不倫相手の赤ん坊を誘拐した女の逃亡生活。第2章では、月日が流れ、その事件で誘拐された赤ん坊は20歳の女性になっています。物語は、誘拐した女と、された子どもへと、語り手をかえて進んでいきます。

冒頭、赤ん坊の誘拐に衝撃を受けたまま、それで?それで?この先どうなるの?と、読む手がとまらず…。ずっと緊迫感をもって読み進みました。

ほとんど覚えていない幼少期の記憶。なのに、払っても払ってもつきまとう「誘拐犯に育てられた子」というレッテル。それをどんな風に受け止め、どんな風に感じてきたか…。そして、「あの人」みたいになりたくない、でも「あの人」と同じことをしているのではないかという恐れ。その思いにどう折り合いをつけ、前に進んでいくのか…。彼女の心情が、心に迫ってきました。

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宇江佐真理「卵のふわふわ」

卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし (講談社文庫) Book 卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし (講談社文庫)

著者:宇江佐 真理
販売元:講談社
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「卵のふわふわ」宇江佐真理(講談社文庫)2007年7月発行.312p.533円

江戸・八丁堀。主人公となるのぶは、北前奉行所に務める正一郎と結婚して6年。舅も姑もかわいがってくれるが、夫の冷たい態度に思い悩んでいた。そんなのぶをいたわりいつもたすけてくれたのは舅の忠右衛門だったが、のぶは椙田の家を出ることを考え始めていた…。

宇江佐さんの時代ものは安心して読むことができます。きっと悪いようにはしないだろうと…。読んでよかった…。おもしろかったです。

夫との心のすれ違いに悩み、揺れるのぶの心情は今も昔も変わらない。何度かぐっときてしまいました。

淡雪豆腐、水雑炊、ところてん、卵のふわふわ…。章ごとに登場する食べ物が、人の心をつなぎ、頑なな心がほどけていく役割を果たしています。忠右衛門の緩さに気持ちが和みました。

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桜庭一樹「青年のための読書クラブ」

青年のための読書クラブ Book 青年のための読書クラブ

著者:桜庭 一樹
販売元:新潮社
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青年のための読書クラブ」桜庭一樹(新潮社)2007年6月発行.231p.1400円

舞台となるのは、東京山の手の伝統ある女学校・聖マリアナ学園。

学園の異端児たちが集う読書クラブには、百年の間受け継がれてきた読書クラブ誌があった。それは、歴代のクラブ員たちが、学園の正史に残らないような事件を起こしたり目撃者となった時に、こっそりと書き残したノートだった…。

五編から成る連作短編集。1919年から近未来の2019年まで、脈々と受け継がれてきたクラブ誌は、当事者ではなくそこから一歩ひいた傍観者が綴ってきたもの。

女子高という閉じられた空間が作り出す独特な雰囲気。クラシカルな文体。作者が構築した世界にすっかりはまってしまいました。

おもしろかったです。「赤朽葉家の伝説」「青年のための読書クラブ」と読んで、すっかり桜庭一樹さんのファンとなりました。

桜庭一樹さんの「私の男」(文藝春秋・2007年10月発行)が、二度目の直木賞候補になってましたね。選考会は1/16。

※第138回芥川賞・直木賞 メッタ斬り!サイトは、こちらから読めます。

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桐野夏生「魂萌え!」

魂萌え ! Book 魂萌え !

著者:桐野 夏生
販売元:毎日新聞社
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「魂萌え!」桐野夏生(毎日新聞社)2005年4月発行.477p.1700円

夫の突然の死、死後にわかった10年にも渡る夫の裏切り、子どもとの遺産争い…。愛人の存在や遺産争いは別にしても、配偶者を亡くした孤独感というのは、いつ我が身にふりかかるかわからないし、経験した人にしかわからないものなのかもしれないと、ただただ、身につまされました。

専業主婦として子どもを育て、倹約し都内に家も建てた。それを長年音信不通だった息子に、居場所も財産も奪われそうになるのを、キリキリと腹立たしい思いで読みました。

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桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」

赤朽葉家の伝説 Book 赤朽葉家の伝説

著者:桜庭 一樹
販売元:東京創元社
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「赤朽葉家(あかくちばけ)の伝説」桜庭一樹(東京創元社)2006年12月発行.309P.1700円

製鉄業で財を成した鳥取の旧家・赤朽葉家。“千里眼奥様”と呼ばれた赤朽葉万葉、その娘で売れっ子漫画家の毛鞠、この物語の語り手で現代に生きる瞳子。高度経済成長期、バブル、平成と、時代の波を背景とした、赤朽葉家三代にわたる女たちの物語です…。

いやー、おもしろかったです。オススメ。

旧家といっても、窮屈さはなく、自由な風の中でパワフルに生きる赤朽葉家の人々。彼らに圧倒されながらも、読み始めるとやめられないとまらない…。

姑にあたるタツを含め、万葉、毛鞠のキャラクターが強烈で、波乱万丈な生涯だったせいか、孫の瞳子の章になると、薄味というか、ちょっとトーンダウンした感じがありました。そのパワーのなさが現代なのかもしれませんね…。

著者の桜庭一樹さんは、名前の印象で男性かと思っていたのですが、女性だったんですね…。

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「朝日のようにさわやかに」恩田陸

朝日のようにさわやかに Book 朝日のようにさわやかに

著者:恩田 陸
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「朝日のようにさわやかに」恩田陸(新潮社)2007年3月発行.281p.1400円

5年ぶりだという恩田陸さんの短編集。ミステリに、SF、ホラー、「麦の海に沈む果実」と「黄昏の百合の骨」に登場する水野理瀬シリーズの番外編など、多彩なラインナップが14編。

余韻の残るものあり、スパッと切られるように終わるのもありと、読後感もそれぞれですが、恩田さんの短編、好きです。特に、「冷凍みかん」が印象に残りました。

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「駆けこみ交番」乃南アサ

駆けこみ交番 Book 駆けこみ交番

著者:乃南 アサ
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「駆けこみ交番」乃南アサ(新潮社)2005年4月発行.326p.1680円

新聞で新潮文庫の新刊広告を見て、あっ!「ボクの町」の続編が出てる!と。しかも2年も前にだよ…。

このシリーズを一言でいうと、新米警察官の成長物語。4編から成る連作短編集です。

主人公の高木聖大は、見習期間も終わり不動前交番勤務になって2か月。気分屋の藤枝主任の嫌味にうんざりし、彼女が欲しいなぁとほざきながらも、がんばる毎日。

そんな中、聖大は、夜中に目が冴えてしまうと言って、時折交番を訪ねてくる老婦人の神谷文恵さんを通して、“とどろきセブン”と称する老人たちと知り合います…。

“とどろきセブン”は、それぞれの特技を生かしながら社会に貢献し続けたいと集う7人のグループ。彼らは町の小さな情報を聖大に教えてくれるのですが、実は裏の顔が…というのが読みどころ。あ~、あの時はこうだったのか…と、後からいろんなことがつながります。

定年間近の刑事の手伝いをすることになった四作目「ワンワン詐欺」が好きでした。

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大崎梢「配達あかずきん」

配達あかずきん (ミステリ・フロンティア) Book 配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)

著者:大崎 梢
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「配達あかずきん」大崎梢(東京創元社)2006年5月発行.238p.1500円

本屋の謎は、本屋が解かなきゃ

駅ビル内の書店・成風堂を舞台に、しっかりものの書店員杏子と、不器用だけど頭の切れるアルバイト多絵のコンビが、さまざまな謎に取り組む連作短編集。

書店を舞台とした日常の謎ミステリ。“成風堂書店事件メモ”シリーズの第1作目です。(現在、二作目「晩夏に捧ぐ」、三作目「サイン会はいかが?」まで出版されています)。

書店での日常や裏話などがふんだんに盛り込まれていて、とてもおもしろく読みました。畑違いですが、私自身似たような仕事をしているので、“タイトルは忘れたんですけど…”とか“テレビ(又は新聞)で見たんですけど”という問い合わせから本を探すことも多く、あるあるある!!と、うなずきながら読みました。

短編それぞれは切ない気持ちを残したりもするものもあるのですが、お客様への対応など、杏子の仕事ぶりがとても気持ちがよく、それが作品全体の爽快感にもつながっているような気がしました。

巻末に、実際に書店で働く女性店員の座談会も掲載されています。

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重松清「青い鳥」

青い鳥 Book 青い鳥

著者:重松 清
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「青い鳥」重松清(新潮社)2007年7月発行.325p.1600円

先生はうまくしゃべれない。だから、“たいせつなこと”しか言わない…。

村内先生は中学校の国語の非常勤講師。吃音を持つ村内先生の一番大切な仕事は、「そばにいること」と「ひとりぼっちじゃない」と伝えること…。

8編から成る連作短編集。

現実はきっと、こんなにはうまくいかないと思うけれど、それでもこうあってほしいなぁ、こういう役割の先生が必要としている子どもたちのそばにいてほしいなぁと強く思いました。よかった、とても。おすすめです。

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藤堂志津子「桜ハウス」

桜ハウス Book 桜ハウス

著者:藤堂 志津子
販売元:集英社
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「桜ハウス」藤堂志津子(集英社)2006年9月発行.214p.1500円

はじめて藤堂志津子さんの小説を読んだのですが、おもしろかったです。

“桜ハウス”で3年間共同生活を送った蝶子、遠望子、綾音、真咲の4人。7年ぶりに再会した彼女たちの現在と過去…。

“桜ハウス”の家主・蝶子を語り手とした4編から成る連作短編集。

年齢もバラバラ、それぞれの個性も欠点も全部わかっている。それでも頼り頼られ、時にはほっておいて見守る。うまくつきあっていく4人の関係が、うらやましくなります。大人の女性の友情物語です。おすすめ。

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北村薫「街の灯」

街の灯 (本格ミステリ・マスターズ) Book 街の灯 (本格ミステリ・マスターズ)

著者:北村 薫
販売元:文藝春秋
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「街の灯」北村薫(文藝春秋)2003年1月発行.303p.1762円

直木賞候補になった「玻璃の天」が読みたくて…。まずは、まだ読んでいなかったシリーズ一作目のこちらから。

語り手は、士族出身の花村家・令嬢で、高校生の栄子。そしてコンビとなるのは、雇われ運転手ベッキーさん(女性で日本人)。日常の謎を解き明かす三篇から成る連作短編集です。

探偵役として推理するのは、あくまでも語り手の“私”。“私”は、ベッキーさんと話をしていく過程で、おかしな点に気づき、次第に自分の考えがはっきりしていきます。ベッキーさんは、“私”の考える道しるべとなる存在ですね。

北村さんの描く女性には、背筋がピンと伸びた清らかなイメージがあります。それが昭和初期・戦前の上流階級…という舞台設定にとてもマッチしていると思いました。私自身は、謎解きよりも、その時代の持つ雰囲気を楽しみました。それにしてもベッキーさんは、何者なんでしょうか…。「玻璃の天」で明らかになっているんでしょうか??

巻末に北村薫さんのスペシャルインタビューおよび、著作リストが掲載されています。

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「中庭の出来事」恩田陸

中庭の出来事 Book 中庭の出来事

著者:恩田 陸
販売元:新潮社
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「中庭の出来事」恩田陸(新潮社)2006年11月発行.382p.1700円

ある舞台脚本家が、新作舞台の女優のオーディションをする。新作舞台は、一人芝居。三人の女優をオーディションに残している。その結果発表と宣伝を兼ねて、彼はホテルの中庭で内輪のパーティを開く。そこで彼は飲んでいた紅茶のカップに毒を盛られて死ぬ。捜査の結果、容疑者はオーディションに残った女優三人に絞られる…。

『チョコレートコスモス』(おすすめ!)に続き、演劇の世界が舞台となっています。

現実と劇中劇とが交錯するストーリー。さらに一見なにも関係がなさそうなエピソードや登場人物も絡まってくるもんだから、複雑でわかりにくかったなぁ…。久々に読んだミステリで、途中までは目が離せなくって夢中になって読んだけれど、最後落ち着くところが、物足りなかったです。

恩田さん、演劇にはまっているんでしょうか。劇団キャラメルボックスの「猫と針」という舞台の脚本も書かれたようですね。

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