「しごとば」鈴木のりたけ

「しごとば」鈴木のりたけ(ブロンズ新社)2009年3月発行.1700円

しごとば しごとば

著者:鈴木 のりたけ
販売元:ブロンズ新社
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美容師、新幹線運転士、すし職人、自動車整備士、木のおもちゃ職人、革職人、歯医者、パティシエ、グラフィックデザイナーと、9つの仕事の現場を再現した絵本。

すごい!と思うのが、仕事に使う、あるいは仕事場に置いてある細々した道具ひとつひとつの名前が、全部書き込まれているところ。

そして、“パーマがかかるまで”、“新幹線運転士の1日”、“まぐろのにぎりができるまで”、“タイヤのパンクが直るまで”、“おもちゃの車ができるまで”、“手縫いの革カバンができるまで”、“虫歯が治るまで”、“ショートケーキができるまで”、“ジュースのパッケージができるまで”…と、それぞれの仕事の流れもわかるようになっています。

子どもだけではなく大人が読んでも、知らなかった仕事の裏側が見られておもしろいです。

グラフィックデザイナーがパーマをかけていたり、美容師さんがホームで新幹線の運転士さんに案内してもらっていたり、自動車整備士さんが家族連れで木のおもちゃを買っていたり…と、遊び心も満載。

最後にご自分の仕事場も公開されています。

続編も制作中だそうですよ。楽しみです。

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「やんごとなき読者」アラン・ベネット

「やんごとなき読者」アラン・ベネット・著 市川恵里・訳(白水社)2009年3月発行.169p.1900円

おもしろかった!!

エリザベス女王が読書にハマったら…という設定からしておもしろそうでしょ。

ある日、女王は吠え続ける犬の詫びを言おうと、バッキンガム宮殿の裏庭に停まっていた移動図書館の車に乗り込んだ。その時、礼儀として1冊本を借りたことがきっかけとなって、読書に夢中になっていく。

女王は移動図書館で出会った、厨房で働く本好きの少年ノーマンを昇進させ、読書の指南人として、自分のそばに置いた。

しかし、女王は読書にのめりこんでゆくにつれて、公務の手を抜くようになり、側近たちには女王の読書は歓迎されない…。

80歳近くになって読書の喜びに目覚めた女王。多くの本を読んで、視野が広がり、他人の気持ちを思いやるようになる。

しかも女王にはこれまで世界中を見て歩き、さまざまな著名人に会ってきた経験がある。

人間的に成長した女王は、やがて自分で文章を書くようになり、ついには大きな決断をする…。

“一冊の本は別の本へとつながり、次々に扉が開かれてゆくのに、読みたいだけ本を読むには時間が足りない”…。

本を読む楽しみがどんどん広がっていく様子に、わかるわかるとうなずくところ多し。

女王の読書熱に振り回される側近たちにクスッと笑い、女王の辛辣な文学批評にニヤリとしながらも、次第に読むことと書くこと、そして女王という立場についても考えさせられます。

ラスト。ええっ!!と驚いたところで、ストンと終わるところも絶妙。

おすすめです。

やんごとなき読者 やんごとなき読者

著者:アラン ベネット
販売元:白水社
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「ふたごの兄弟の物語」トンケ・ドラフト

「ふたごの兄弟の物語(上)」トンケ・ドラフト・作 西村由美・訳(岩波少年文庫)2008年12月発行.326p.720円

「ふたごの兄弟の物語(下)」トンケ・ドラフト・作 西村由美・訳(岩波少年文庫)2008年12月発行.330p.720円

「王への手紙」がおもしろかった、トンケ・ドラフトのデビュー作。1961年に発表されたもの。読んでいてどこか懐かしい感じがしますが、ちっとも古びていません。

バビナ国の美しい首都バイヌーに住むふたごの兄弟ラウレンゾーとジャコモは、外見はそっくりだけど、性格は正反対。

腕のいい貴金属細工師として名をなしていく兄のラウレンゾーと、自分に向いている仕事がわからず、あちこち旅に出るジャコモ。

二人は一緒に、あるいは一人で旅に出かけ、たくさんの冒険を体験することになります。その中では、牢屋に入れられたり、難破事故で流れ着いた見知らぬ国の王になったり、裁判にかけられたりと、さまざまなことに巻き込まれていきます。

二人はとても仲良しで、どんな時でも助け合い、時にはそっくりなのを利用して騙したりしながら、危機を乗り越えます。やがて青年になった二人は愛する奥さんを見つけ、最後の最後にはジャコモも自分に向く職業を見つけます…。

一話完結型。ハラハラドキドキさせながらも、二人が知恵を出し合い、機転を利かせて問題を解決し、すべてめでたしめでたしで終わるので、爽快感があり読んでいて気持ちがいい。おもしろかった!おすすめです。

ちなみに著者のトンケさんは、12歳から15歳までをインドネシアの日本軍収容所で過ごしたと言います。収容所時代に作ったお話の一つからバビナ国が生まれ、それがこの物語の舞台に発展したそうです。

 ふたごの兄弟の物語 上 ふたごの兄弟の物語 上
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 ふたごの兄弟の物語 下 ふたごの兄弟の物語 下
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「ダーウィン」

「ダーウィン」アリス・B・マクギンティ・文 メアリー・アゼアリアン・絵 千葉茂樹・訳(BL出版)2008年8月発行.48p.29×20㎝.1600円

ダーウィン ダーウィン

著者:アリス・B. マクギンティ
販売元:BL出版
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今年2009年、生誕200年を迎えたダーウィンの伝記絵本。

チャールズ・ダーウィンは、幼い頃から、石や貝殻、昆虫などの採集が大好きで、化学に強い興味を持っていた。

父親はチャールズに医者や牧師になる勉強をさせるが、彼にとってはどちらも退屈で、よく授業に顔を出していた植物学のヘンズロー教授から動物学や地質学について教えてもらった。

大学卒業後、ヘンズロー教授から南アメリカを探検し、世界一周して戻ってくる航海に参加しないかという手紙が届く。

チャールズは、反対する父親を叔父の力も借りて説得し航海に参加。1831年英国軍艦ビーグル号に乗り、5年にわたる世界一周旅行に出かけた。

港に着くたびに下船し、その土地の地質学を学び、化石や植物、昆虫や鳥などを採集し、島々を探検した。

そして、チャールズがガラパゴス諸島で集めたさまざまな姿のフィンチという鳥が、後に生物の進化を発見するきっかけとなる。

しかしそれは、神がすべての動植物を今ある姿のままつくったという聖書の教えに反するもの。教会の教えに反する意見を発表すれば、神への冒涜だとみなされ、牢獄に入れられてしまう。自分自身ばかりでなく、家族にも汚名が着せられるかもしれない。

そんな恐れを抱いたチャールズは、何冊もの秘密のノートに自分の考えをまとめ、自分の説を裏付ける実験をし、理論を練り上げていった。

そして、1859年、「種の起源」という本を出版する。

その理論は、当時反論や反発もあったが、科学の世界に新しい考え方をもたらした…。

チャールズ・ダーウィンが、生物の進化を発見し発表に至るまでを、日記や手紙・メモなどを織り込みながら描いていきます。

まずは、ダーウィンのことを、ざっくりと知りたい時にどうぞ。

木版画は、「雪の写真家ベントレー」でコールデコット賞を受賞したメアリー・アゼアリアン。そして、メアリー・アゼアリアンと言えば、翻訳は千葉茂樹さんです。

小学校高学年くらいから。

ダーウィンの伝記絵本と言えばこちらの方が有名でしょうか…。

「生命の樹」ピーター・シス・文・絵 原田勝・訳(徳間書店)2005年6月発行.40p.32㎝.1700円

メアリー・アゼアリアンの「ダーウィン」よりも、もっと細かく詳しく書かれた伝記絵本。

綿密に下調べをして描かれたんだろうなぁと思わせる、素晴らしい絵本です。

膨大な資料を元に、ビーグル号の内部断面図、絵日記風の航海日誌など、情報量たっぷりに73年の生涯を描いていきます。

ストーリーを追う読みものとしてはもちろん、いろんなものが詰め込まれた図鑑風でもあります。

2004年のボローニャ国際児童図書展ノンフィクション大賞受賞作品。大人にもおすすめ。

小学生の調べ学習にも使えそうなのは、こちら…。

「進化の海へ ダーウィン(教科書に出てくる世界の科学者たち)」杉山薫里・文・絵(汐文社)2008年8月発行.47p.2000円

“ダーウィンを知ろう”、“ビーグル号航海記”、“種の起源”と大きく3つに分かれた章の中で、1項目をそれぞれ見開き1ページで簡潔にまとめています。絵がたっぷりで見やすくわかりやすくなっています。

各ページにちょこちょこっと描かれたかわいらしいイラストと手書きのコメントが楽しい。科学が身近に感じられます。

ダーウィンが生まれた頃のイギリスの様子のページもあり。

余談ですが、ダーウィンはイギリスの陶器メーカー、ウエッジ・ウッド社の創設者の孫(母方の祖父)にあたるそうです。

ダーウィンは40年以上ミミズの研究もしていました…。

「ダーウィンのミミズの研究(たくさんのふしぎ傑作集)」新妻昭夫・文 杉田比呂美・絵(福音館書店)2000年6月発行.40p.1300円

ミミズが肥沃土をつくっているのではないかと考えて、ダーウィンが40年にわたって行っていた研究。それを始めるきっかけとは?

そして、ダーウィンがどんな風に観察や実験を行ない、その結果はどんなものだったのかが、わかりやすくまとめられています。

さらに、動物学者である著者は、ダーウィンが研究していたダウン・ハウスの庭を掘ってみたいと現地まで足を運びます。ダーウィンが研究のためにまいた白亜が見つからず、四苦八苦した顛末はいかに??

こちらは、遊べる迷路絵本です…。

「ダーウィンの迷路」アンナ・ニルセン・作 枝廣淳子/枝廣あかり・訳(新風舎)2005年10月発行.1460円

ビーグル号に乗ってイギリスから南アメリカまで、ダーウィンが旅した道のりを迷路で進んで行こう!絵探しもあり。「マルコポーロの迷路」と2冊シリーズです。

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「甘粕正彦 乱心の曠野」佐野眞一

「甘粕正彦 乱心の曠野」佐野眞一(新潮社)2008年5月発行.475p.1900円

甘粕正彦の評伝。今年2009年、第31回講談社ノンフィクション賞受賞作品です。

陸軍士官学校に入学した甘粕は、落馬事故による怪我でエリートコースを外れ、憲兵になることを余儀なくされる。

甘粕憲兵大尉は、大正12年関東大震災の大混乱に乗じて、無政府主義者の大杉栄・伊藤野枝夫妻と7歳になる甥を虐殺した(大杉事件)首謀者として、軍法会議で実刑判決を受けた。

大杉事件で軍籍をはく奪された甘粕は、刑務所を出所後、フランスに渡り、その後、満州へ移住。

満州事変をはじめとする謀略工作に深く関わり、最後は満州映画協会(満映)の理事長として、青酸カリをあおって自決した。54年の生涯だった。

著者は、膨大な歴史資料にあたり、甘粕氏と接した人々を取材し、ゆかりの地を歩いて、彼の謎に満ちた生涯をたどっていきます。

私自身、甘粕像として思い浮かぶのは映画「ラストエンペラー」で演じた坂本龍一さんで、大杉事件についても教科書で習う程度しか知識がなく、知らないことばかりだったので、最後まで興味深く読めました。

特に、今はほぼ定説となっているそうですが、甘粕が大杉事件のエスケープゴートとして全責任を一人でかぶったという話は驚きました…。

映画「ラストエンペラー」の影響か、甘粕氏には潔癖で冷酷非情なイメージを持っていましたが、この本の中では、部下から慕われ、子どもにもなつかれると言っていた意外な甘粕像もあぶりだされます。

最後の職場となった満映に移ってからは、職員の待遇改善を進め、特に中国人スタッフには給与を倍以上に引き上げ、中国人を蔑視する言動を禁じたり、終戦後、満映社員ために脱出用の列車を確保し、退職金分の現金を用意したといいます。

全編を通して、自分自身よりも国家を優先し、敵役を一人で背負わされた男の孤独が伝わってきました。

読み応えありました。

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絵本「なきすぎてはいけない」

「なきすぎてはいけない」内田麟太郎・作 たかすかずみ・絵(岩崎書店)2009年5月発行.1300円

なくなったものは だれも

いきているものの しあわせをいのっている

ただそれだけを

だから ないてもいいけど なきすぎてはいけない

わたしが いなくなっても

わたしが すきだったのは

わらっている おまえだったのだから

亡くなったおじいちゃんが、その死を悲しむ孫に贈るメッセージ。

亡くなっても生きているものの幸せをずっと願っている、これからも空の上から見守り続けるよというおじいちゃんの愛情が感じられます。

大切な人を亡くした心にぐっとくる…、そして背中を押してくれるような、詩的な絵本です。

絵は「きつねのでんわボックス」を描かれた、たかすかずみさん。紗が掛かったような淡い絵が、孫との楽しい思い出に思いをはせるおじいちゃんの心情にぴったりだと思いました。

 なきすぎてはいけない なきすぎてはいけない
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絵本「やまからきたぺんぎん」

「やまからきたぺんぎん」佐々木マキ・作・絵(フレーベル館)2008年6月発行.32p.27×22㎝.1200円

やまおくにひとりですんでいるぺんぎんがいた。ぺんぎんは毎日魚を捕って食べていたが、「お魚ばかりでうんざりだ。あー、かき氷が食べたい」と、人間の子どもに変装して、街へとやってきた。

“氷”ののれんを見つけてお店に入ったぺんぎんは、かき氷を注文し、おいしくて何杯も何杯もお代わりした。

食べ終わってからお金を持っていないことに気がついたぺんぎんは、お店のおじさんのところで働くことにした。

ぺんぎんの売るアイスクリームは、おもしろいほどよく売れた。

ある日、仕事帰りのぺんぎんが、車に乗った男に誘拐される。ぺんぎんは自分を売り飛ばそうとする男に売上のお金を差し出して、倉庫へ行けばもっとあるよと誘った…。

その倉庫というのは、街にいる間にぺんぎんが寝泊まりしているお店の大きな冷蔵庫。ぺんぎんの機転で、男は捕まります。

山へ帰ることにしたペンギンにおじさんがくれたものとは??…それは読んでのお楽しみ。

暑い夏に読みたい絵本です。

 やまからきたぺんぎん やまからきたぺんぎん
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「殺人者の涙」アン=ロール・ボンドゥ

「殺人者の涙」アン=ロール・ボンドゥ・著 伏見操・訳(小峰書店)2008年12月発行.224p1500円

南米チリ・最南端の地の果て、めったに人が来ることがないポヴェルド農場。

ある日、その農場におたずね者の人殺し、アンヘル・アレグリアが逃亡生活を終えるためにやってきた。彼はなんのためらいもなくポロヴェルド夫婦を殺した後、その家に住み着き、殺すのをためらった夫婦の子どもパオロと一緒に暮らし始める…。

畑を耕し、ヤギやニワトリを育てる生活をしているうち、親もなくたった一人で路上で生きてきたアンヘルの中に、初めて愛情という感情が芽生え、パオロが彼にとってかけがえのない存在になっていく。

1年後、最果てのポロヴェルド農場に、都会育ちの裕福な家の青年が身を隠すためにやってきた。パオロが放った一言で、アンヘルはルイスを始末することをやめ、三人で暮らすようになる。

ポオロの世話をしご飯を食べさてくれるアンヘルと、文字や詩の美しさを教えてくれるルイス。

アンヘルは、ポオロがルイスになつくことに嫉妬を覚え、ルイスが朗読する詩に涙するなど、今まで知らなかった感情にであうようになる。

しかし、三人が市場に行くために南に向かい、そこでルイスが絵描きのデリアと恋に落ちてから状況が変わっていく。

ルイスに裏切られ、アンヘルはパオロを連れて森の中に逃げる。パオロを終わりのない自分の逃亡の道連れにしダメにしてはいけない、そう思ったアンヘルは、森の中で一人で暮らす老人リカルドにパオロを託して姿を消すことを決断する。しかし、警察の追跡の手は、アンヘルのすぐ間近に迫っていた…。

不器用なアンヘルの愛情は、時として狂おしいほどで切ない。

アンヘルは35年生きてきて初めて人を愛することを知り、ポオロは母親からは感じられなかった愛情をアンヘルから感じ取る。

自分の両親を殺した男と一緒に暮らすという奇妙な生活。しかしそこから、アンヘルは人として生き直し、ポオロは人として成長していく。

衝撃的なシーンも数あるけれど、読後いやな印象が残らないのは、二人の絆がしっかりと心の中に残るからだ。

 殺人者の涙 殺人者の涙
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「マンガで学ぶナチスの時代」汐文社

「マンガで学ぶナチスの時代 (1.ある家族の秘密)」エリック・ヒューフェル・絵 リュート・ファン・デア・ロール/メンノ・メッツェラー・文 早川敦子・監訳(汐文社)2009.2月発行.63p.2500円

「マンガで学ぶナチスの時代 (2..真実をさがして)」エリック・ヒューフェル・絵 リュート・ファン・デア・ロール/リース・スキパース・文 早川敦子・監訳(汐文社)2009.3月発行.61p.2500円

アンネ・フランクが過ごした隠れ家が現在アンネ・フランク・ハウスという記念館として公開されているそうですが、この本はそのアンネ・フランク・ハウスが、オランダの小中学校の生徒たちに歴史を伝えるために制作した漫画です。

大判の本をパッと開いた時、エルジェの「タンタンの冒険旅行シリーズ」のような印象ですが、中身はシリアス…。

1938年の冬から終戦までのオランダ・アムステルダムを舞台に、オランダ人ヘレナと、ドイツを追われて隣に引っ越してきたユダヤ人家族・ヘクト家のエスターとの友情を軸に、戦時下の二人の少女の物語を描いていきます。

1巻目の「ある家族の秘密」は、オランダ人ヘレナの視点から描きます。

警察官の父は職業上やむなくナチスに協力し、それを非難する母。二人の兄は一人はナチスを支持、もう一人は抵抗運動に身を投じる状況にあり、ヘレナの家族は険悪な雰囲気に。

そんな中、ユダヤ人のヘクト家は次第に追い詰められていき、ヘレナと親友のエスターは生き別れることに…。

ヘクト家が姿を消した時、父がそのユダヤ人狩りに加わっていたことを知り、母娘は大きな衝撃を受けるのですが、ラストに思いがけない真相が明らかになります…。

2巻目の「真実をさがして」では、両親がユダヤ人狩りでドイツ軍に連行され、下校してきたエスターがその後どうなったのか、ユダヤ人のエスターが語ります。

どちらも孫の世代にあの時代にあったことを伝えるというスタンスになっています。

歴史的事実もきちんと織り込み、それでいて二人の少女の運命はどうなるんだろうというストーリー性もあって、読み出したら止まりません。ぜひ2巻合わせて読んで下さい。

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映画「愛を読むひと」

「愛を読むひと」スティーヴン・ダルドリー監督.124分

原作は、出版当時ずいぶん話題になったベルンハルト・シュリンクの「朗読者」。読んだはずなのにどんな話だったかすっかり忘れているとはどうなのよ…と我ながら思うけれど、読んでいても読んでなくても忘れていても、いい映画でした。

1958年、ドイツ。15歳のマイケルは、学校帰り道に具合が悪くなり、助けてもらった21歳年上の女性ハンナと恋に落ちる。

一緒に過ごす時間の中で、マイケルはハンナから頼まれて本の朗読をするようになる。それを涙を流したり興奮したり…と喜んで聞くハンナ。ところがある日突然ハンナは、姿を消してしまう。

それから8年後、法学部の学生になったマイケルは、ゼミのために傍聴した裁判で、ナチスの戦犯として被告席に座るハンナを見る。ハンナは、不当な証言を受け入れて無期懲役となるが、それでも守りたかった“秘密”が、ハンナにはあった。

ハンナとの出会いから20年。マイケルは、ハンナとの思い出の「オデュッセイア」「犬を連れた奥さん」などの本を朗読したカセットテープを、刑に服すハンナに送り続ける…。

マイケル役のデビッド・クロスは、どう見ても15歳には見えないことはさておき…。

初めは一人暮らしで路面電車の車掌をしていることしか素性が明らかにされないハンナ。しかし、彼女が抱えていた秘密については、見ているうちに次第に気がついていきます。

裁判を傍聴していたマイケルが過去を思い出しハンナの秘密に気がついても、苦悩しながらもそれを口にしたり、彼女の罪を軽くするために動かなかったのは、不当な罪をかぶってまで隠そうとしたハンナの気持ちを尊重した彼の愛だったのではないかと感じたのですが、どうなんでしょう??

マイケルがハンナに乞われても手紙を出さなかった訳や、ハンナが最後に選んだ選択を、どう受け取るか見終わってからも、ぐるぐるぐるぐると考え続けました。

ラスト、マイケルがハンナが遺したものを裁判の証言者となった女性に届けにいった時、「彼女の秘密を知っても赦すつもりはない」と言ったところで、映画がきりりと締まった気がしました。

36歳から30年間にわたるヒロイン・ハンナを演じたケイト・ウィンスレットは、この作品でアカデミー最優秀主演女優賞を受賞。凄みを感じる演技でした。

重いし哀しい恋愛映画ですが、ぜひ見て欲しいです。

          ※「愛を読むひと」の公式サイトは、こちらから。

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